エルメラ県のコーヒー生産者グループGATAMIR(ガタミル)で2013年末に実施した水源保全のための活動。莫大なお金をかけてインフラを整備するのではなく、自然の力・祖先の魂を敬い、地形・気候に適した形を見極めて、住民自らがしごとをする。そのやり方が多くの人に認められ、現地のテレビやラジオの取材、国際NGOなどの訪問が相次いでいます。
今年度は、同じエルメラ県でも別のコーヒー生産者グループFitun Caetano(フィトゥン・カイタノ)の地域で同様の活動を実施しました。昨年度GATAMIRでの活動に参加したFitun Caetanoのメンバーが「次は自分たちの地域で!」と意欲的に準備を進めてきました。当初は2014年内に実施する予定でしたが、雨季に入るのが例年よりかなり遅れたため、雨を待っての実施となりました。前回同様、グループのメンバーだけでなく、子どもからおとなまで地域の沢山の人たち、そして今回は、「この実践から学びたい!」とはるばる別の県からやってきたコミュニティのリーダーたちなど、合計で100人近い参加者が、エゴ・レモスさんの指導の元に協同で作業を進めることになりました。
何のため、誰のための活動?
初日は、オリエンテーションから。世界の水を取り巻く状況、気候変動で東ティモールにも大きな影響が出始めていること、水がなくなったら農業どころか生活ができなくなってしまうこと……。深刻なテーマですが、「だからこそ、自分たちの地域の森を育て、水源を守っていくことが大切なんだ!別に(APLAをはじめとした)支援者のために活動をするわけじゃない、ぼく(=エゴさん)のためのでもない。ここで生活しているみなさん、そしてみなさんの子どもや孫が豊かに生きていけるように活動するんだよ」と語りかけ、活動の目的や作業の方法についてわかりやすく説明するエゴさん。そして、各地域の参加者の自己紹介やそれぞれの経験共有をすることで、これから一緒に作業する仲間たちのまとまりをつくりあげていきます。
そして、この水源はグループのメンバーだけでなく地域みんなのものだからこそ、欠かせないのが地域の慣習にのっとった形での儀式。いわゆる「地鎮祭」のようなものをイメージしてもらえるといいかもしれません。エゴさんは「暮らしを良くしていくための技術や知識も大切だけれど、そちらにばかり目が向いて、祖先から受け継いできた智慧をないがしろにすることがあってはいけない」とみんなに向けて強調していました。
祖先の魂に敬意をはらう
写真の通り、女性も男性もタイス(東ティモールの伝統的な織物)や飾りを身につけて、銅鑼や太鼓などを鳴らしながら、みんなで水源まで行進します。
そして、儀式を司る長のもと、この活動が滞りなく進行するよう祈り、いい成果が出るかどうかを占います。動物(鶏、犬、子豚)を生け贄にささげ、その内臓を使って占うので、ショッキングに思う方もいるかもしれませんが、それがここのやり方。占いの結果、「この活動は成功するよ!Avo sira mos simu project ida ne’e(祖先の魂もこの活動を受け入れてくれた)」と長のおじさん。エゴさんをはじめ、一同ほっと胸をなでおろして、初日の作業に取りかかりました。
協働するってすごい!
元々は泥地の中から湧き出た水が流れていただけの「水源」。その周辺を掘り進めていくと、最初は水たまりに泥水がたまっているような見かけでしたが、周囲を石できれいに固めて整備し、たったの半日すっかりきれいな泉(?)に変身しました。みんなで力をあわせて働くってすごいですね。
今回のプログラムには、子どもたちも積極的に参加しました。村では小さな子どもたちがわんさか。笑ったり泣いたりはしゃいだり喧嘩したり、いつも賑やかです。会議やワークショップが開かれる時には、大人たちは「うるさい!あっちに行ってなさい!」と追い払うことが多いのですが、エゴさんは(込み入った会議はともかくとして)「子どもたちにも見て・参加して学んでもらう方がいいでしょ、何で追い払う必要があるの?」とみんなを諭します。この日、子どもたちを呼び集めて「水源の周囲を彩る花や草を採りにいくよ!ついておいで!」とにっこり。子どもたちにとっても素晴らしい学びの場になりました。
翌朝、この泉をのぞいてみると、泥はすでに沈殿していて、どんどん湧き出てくる透き通った水で満ちていました。
2日目以降の作業については、報告(その2)、(その3)をご覧ください。
報告:野川未央(のがわ・みお/APLA事務局)
※このプログラムは、地球環境基金の助成を受けて実施しています。