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220号(2013年9月+10月)【コラム】小商い開店中(2)zuco 明日のおやつ

インターネットで注文を受け、手作りのお菓子を全国に配送している「zuco 明日のおやつ」の宮川和子さんは、まさに〈小商い〉の担い手。2013年6月23日に開催されたイベント「いいね!フェアトレード いいの?TPP」でのトーク内容から一部をご紹介します。

当日の昼、友産友消マーケットにて。

当日の昼、友産友消マーケットにて。

「学生時代に飢餓や貧困の問題に取り組むNGOに関わっていました。寄付金や補助金の基になっている資本主義経済の仕組みが知りたくて、外資系証券会社に就職しました。私が謎を解明する前につぶれてしまったという変なオチがつきましたけど」という自己紹介で会場を笑いに誘います。「飢餓や貧困や差別といった問題が全部なくなって自分の理想的な社会になったとしたら、私は何をしたいかと想像したときに、祖父や父親が作ってきたお菓子をこの時代にちょうどいい形で作りたいと思ったんです。直接的に社会を変える活動をしなくても、理想と思う社会にベクトルを合わせていけるはずと考え、お菓子屋を始めてちょうど1年になります」。お話の通り、ご実家は、台湾から来たお祖父さんが始めた中華菓子屋さんだったそうです。

明日のおやつという名前

「今すごくおなかが減っていて甘いものを食べたい!というときに、たとえばコンビニの棚の前で、このお菓子は“いいもの”かどうかを考えるのは難しいかなと思います。でも、明日なにを食べようかなぁ、というくらい心に少し余裕がある時には、色々なことを考えておやつを買ってほしいなと思って、明日のおやつという名前にしました」と宮川さん。お店のコンセプトにもつながる材料選びについては、「例えば、カナダ産の有機栽培の小麦粉と国産の慣行栽培の小麦粉、どちらが正しいかと聞かれたときに、私は答えをもっていません。でも答えがないなりに色々考えて選ばなくてはいけないし、それはおやつづくりの材料だけではなく、食べものを選ぶときはいつもそうであるはず。最近、オーガニックや無添加のお菓子屋さんも増えていますが、何かひとつの指標だけを前面に押し出すのって、『うちは安いです』という宣伝とあまり変わらない気がするんですね。それよりも、色々な視点、色々な選び方があるよねということを伝えられたらいいと考えています。特に、お菓子は嗜好品であり、食べなくても死なないものなのに、それで誰かを傷つけてはいけないですよね」とハッとするようなお話がありました。

友産友消という言葉に共感
オススメ!お豆と米粉のパウンド

オススメ!お豆と米粉のパウンド

当日のマーケットでも完売となってしまった焼き菓子については、「フェアトレードを紹介するもの、在来種を紹介するもの、という感じでラインナップを組んでいます」とのこと。友産友消(ともさんともしょう)をテーマとした今回のイベントで特にオススメしていたのは、「お豆の米粉パウンド」。北海道の在来種のお豆とフィリピンのマスコバド糖をたっぷり使用した、日本に残したい友産と遠い国の大事にしたい友産を組み合わせたスペシャルおやつだそうです。お祖父さんさんから教わったレシピをもとにした月餅も作られていますが、「月餅は、ラードを使わなくてはいけないこともあり、自分が完全に納得できる材料だけを使えるわけではありません。そのことをウェブ上でも説明しています。いつかきちんと納得したもので作れるようになるまでお菓子屋さんをつづけたいです」という真摯な姿勢にも惹かれます。「友産友消は、基準をひとつに限定せず、『私が買うものは私が決めます!』とまず宣言して、フェアトレードにしようとか、国産にしようとか、常に自分で考えて自分で選択するというのがすごくいいなと思います。納得できる色々な材料を色々なところから選んできてお菓子屋を始めたので、あまりまとまりがないなぁと感じることがあったけれど、友産友消という言葉のおかげでしっくりきてうれしく思っています」という最後の一言に会場からも大きな拍手があがりました。(まとめ:野川未央/APLA)

zuco 明日のおやつ
HP:https://www.zuco-oyatsu.jp/

みなさんは「小商い」という言葉を聞いたことがありますか?『小商いのすすめ』(2012年、ミシマ社)の著者である平川克美さんは「自分の手の届く距離、目で見える範囲、体温で感じる圏域でビジネスをしていくこと」だと説明しています。グローバル化によって、一握りの大企業が世の中を席巻する昨今、私たちの身の回りには、誰がどこでどのように作ったかが見えにくいモノがあふれてきています。その裏では、環境破壊や資源を巡る争い、遺伝子組み換え作物の急増も。この事態を変えていく鍵が「小商い」にあるかも…!と考え、その実践者にお話を聞きます。