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2013年2月3日~10日東ティモールで「協同」についてのセミナーを開催

2013年2月、オルター・トレード・ティモール社(ATT)の「コーヒー生産者グループ」を対象に、単にまとまってコーヒーを出荷するだけでなく、より自助性の高い「生産者組合」をめざす第一歩を踏み出すため、長野県にある産直市場グリーンファーム(注)の小林史麿会長(71歳)を東ティモールにお呼びし、「農民による自立的・安定的な地域づくりのための協同とは」と題したセミナーを開催しました。

ハトリア郡ハトリア村タロ集落のコーヒー生産者たちと。

セミナー開催に先立って、小林さんをエルメラ県のコーヒー生産地域にお連れしました。2月は雨季真っ只中……のはずが、幸いにもエルメラ滞在中は一度も雨に降られず、コミュニティへの大変な山道も何とかクリア。3日間の限られた時間でしたが、3つの生産者グループのメンバーと交流し、地域の中でどんなことが改善していけるのか、を一緒に考えました。

タケノコの収穫。子どもたちは興味津々。

そして、文字通り「何でも売っている」直売所グリーンファームの小林さんは、「あるもの探し」が非常に上手です。たとえば、山道に竹がわんさか茂っているのを見て、「あれをきちんと手入れして、タケノコをとれば、食べものとしても売れるし、竹材だってよく育つはず」と村の人びとに伝えます。東ティモールでも、タケノコを食べる人たちはいるのですが、それほどポピュラーではなく、どちらかというと「他に食べるものがないから、仕方なく」というような感覚を持っている人が多いようです。今回は、今までタケノコを食べたことのない家族と一緒に、山の中にタケノコを収穫に行き、塩茹でしてあく抜きしたものをいただきました。最初はおそるおそる……という感じだった子どもたちも、味見をしたら「おいしい!」と笑顔。その日の夜ごはんと翌日の昼ごはんで食べきってしまったそうです。

それ以外にも、野菜の栽培や家畜の飼育方法を視察して、様々なアドバイスをしてくださった小林さん。農民たちが使用する道具に大きな制約があること、家畜を育てるにしても十分なエサが確保できないこと、天候や農業用水の問題などなど……これまでAPLAも一緒に頭を悩ませてきたように、課題は山積みなのですが、重要なのは「(外部の人間ではなく)本人たちが議論し、創意工夫し、課題を乗り越えていこうとする意識だ」と小林さん。外からの刺激や東ティモール国内での交流などを通じて、意識が変わっていくことを願いながら、コーヒー生産者たちと関わっているAPLAも同じ考えです。この2年半重点的に活動してきたグループとの合言葉は「Neineik neineik, mais beibeik beibeik(ゆっくりゆっくり、でもずっと歩き続けられるように)」。時に、じれったく感じたりしながらも、東ティモールの人たちのペースに寄り添って活動していくことが、実は一番の近道であり、確実な方法なのだと改めて感じました。

限られた農道具を見て「これは大変な作業だ…」と小林さん。

「トウモロコシ、もう少し実がつかないと…」

 

グループに分かれて真剣に議論中。

その後、ディリで開催したセミナーには、コーヒー生産者グループリーダー約30人が参加し、小林さんの日本での経験に熱心に耳を傾けました。こうしたセミナーに初じめ参加するリーダーたちも多くいましたが、質疑応答やグループに分かれての議論の時間もたっぷり取り、「協同」の可能性について学び・考える貴重な第一歩となったように思います。また、協同組合を管轄する商業産業環境省(MCIA)からも担当副大臣および書記官らの参加があったことで、東ティモール政府に対しても、課題やその克服のための提案など、インプットをすることができたことは、もう一つの大きな成果でした。

今後の課題としては、今回実現したコーヒー生産者への動機づけを、どのようにして持続し、さらに具体的な動きにつなげていくことができるか、という点に尽きます。具体的には、出資金の積み立てによる金庫や共済のような仕組みづくり、種や苗・農具の協同管理、日常生活用品の協同購入、そしてそれらの運営を担うスタッフの育成など、地道な積み重ねとフォローアップが大切だと考えています。

報告:野川未央(のがわ・みお/APLA事務局)

注:長野県伊那市で1994年にオープンした民間経営の農産物直売所。現在では、年間来場者数57万人を越えている。「農協や行政に頼らない、生産者が主人公の直売所」、「日本一おもしろい直売所」としても有名。公式HP:http://www.green-farm.asia/

※このプログラムは、生協総合研究所 アジア生協協力基金 の助成金を受けて実施しました。