6月中旬、バナナをお届けしている福島の幼稚園・保育園を訪問しました。今回伺ったのは、(学)同朋学園 同朋幼稚園、あすなろ保育園、福島こひつじ幼稚園の3ヵ所です。
同朋幼稚園
理事長でもあり、真行寺副住職でもある佐々木さんや地域のお母さん方からお話を伺いました。福島のローカルな新聞には出ているのに、東京には流れてこない情報もあり、私たちがもっと媒介となって伝えていかなくてはいけないんだなということを再認識。微力ながら、私も周りの人に、聞いた話を伝えはじめています。
地域のお母さんは、保養についてお話をしてくださいました。初めて子どもが保養に行った時、普段福島では外に出れない分、保養先の子どもたちと比べて肌が白かったそうです。また、原発事故後、触ることのできなかった植物が保養先にあっても、触るまでに時間がかかる子もいるそうです。少し大きな子になると、保養先で花は触っても、「福島に戻れば触っちゃいけないんでしょ」とわかっている様子。私が小さいころは、近くに森もありましたし、よくツツジの蜜を吸っていました。外でのびのび遊ぶことも普通でした。でも、そういう「当たり前」のことも、福島の子どもたちには制限がかかってしまうんですね……。また、子どもの保養の同伴のため仕事の休みを取りたくても、なかなか言いづらい環境になってきているとの話も聞きました。そんななかでも、「保養に行くことにより、よその子どもたちが体験できないこともできるし、いつか親のしていること(除染や保養の意味)をわかってくれるときが来る」という明るい言葉もありました。
あすなろ保育園
社会福祉の礎を築いたといわれる瓜生岩子氏が創始者であるあすなろ保育園。子どもたちや保護者のことも考えられた方針や、先生方の温かさが印象的でした。森に囲まれた広い園内は、まるで迷路のようにくねくねしていて、たくさんの部屋がありました。まだ再開していない周りの公立の幼稚園からも子どもたちが入園してくるので、今は70人以上の子どもたちの声で賑わっています。
原発が爆発する前は、園の外にある「みどりのおへや」という木に囲まれた場所で、夏は子どもたちが落ち葉の中で遊んでいたそうですが、今は立入禁止になってしまったとのこと。外にある農園でも作物が育てられなくなってしまったので、今は玄関の入口にプランターを設置し育てています。外の木製の遊具も鉄に変えたり、除染後、園庭にゴムチップを導入したり、保育の環境が変わり、先生方の仕事が一気に増えたことも伝わりました。そんななかでも、やっぱり子どもたちの笑顔が印象的でした。みんな明るく、中には「俺にもバナナついてる!」と言って、ズボンを脱いで見せてくれた子も。これには、私たちも先生も大笑い。
ちなみに、あすなろ保育園では、教育方針として今まで地産地消に取り組んでいたそうですが、震災後は子どもたちのために、と食べものに対する考えも変わり、今ではバランゴンバナナも子どもたちのおやつに大活躍とのことでした。
福島こひつじ幼稚園
福島駅からほど近いところにある福島こひつじ幼稚園。キリスト教会付属ということもあり、私たちの到着時には、先生と子どもたちが賛美歌を歌っていました。バナナが届くと、いつも食べる前に必ず「ありがとうございます」と電話をくださる園長先生と子どもたち。今回訪問をして、先生方が子どもたちに「感謝をする」ことの大切さを教えているのがとても伝わってきました。
賛美歌のあと、一人ひとりバナナのお礼を言ってくれ、さらには、バナナを届けている私たちの名前までしっかり覚えてくれました。帰る時も、幼稚園児がここまでしっかり話ができるのか……と圧巻されるほどのお祈りが。その中には、バナナを送ってくれることに対する感謝、私たちが訪問したことに対する感謝、帰路の安全を願う感謝まであり、本当に驚きました。
今まで普通に食べることのできていた枇杷やアスパラ、土筆やふきのとうは食べられなくなってしまい、卒業のときの恒例だったあんずジャムもあげることができなくなってしまったとのこと。四季折々のものを食べさせてあげられないことを、先生も残念がっていました。今は、園庭にあるアスパラの苗を水の中に入れて残していて、土を変えた後もう一度育てみるそうです。
園では、ミサで歌うことがあったり、子どもたちが楽器で演奏したり、とても明るい子どもたちの声が響いています。「音楽はストレスをなくす」と園長先生。他にも、色々な年齢の子どもがいるので、「家族に弟や妹がいない子にとっては、小さい子の存在のおかげで思いやりがある優しい子が育つ」ともおっしゃっていました。園児の中には兄弟で入園している子ども、お母さんがこひつじ幼稚園卒業生の子もいたり、一人ひとりの距離がとても近くアットホームな幼稚園でした。
訪問を終えて
少しずつですが、こうやってバナナお届け先の幼稚園の先生や子どもたち交流ができること、嬉しく思います。今後も、子どもたちからの「ありがとう」や、子どもたちと出会っていただいた気持ちを、いつも募金をしてくださっている方やバナナ生産者の皆さんに届けていきたいと思います。
報告:赤石優衣(あかいし・ゆい/APLA事務局)