カネシゲファーム・ルーラルキャンパス(KF-RC)の研修生3期生のジョナンくんと、4期生でこの7月に卒業したばかりのマージュンくんとマイケルくんの地域を訪問してきました。少し時間が経ってしまいましたが、報告します。
ジョナンくんは、カンラオン山の中腹にあるバイス村の出身です。バイスは、バランゴンバナナの民衆交易が始まった当初、たくさんバナナを出していた村の一つです。バナナの病害が発生した後は出荷作業が休止していましたが、バナナが回復しはじめて数年前に再開しました。その村で、ジョナンくんは、KF-RCで学んだ循環型農業を実践しはじめています。
卒業後、5、6、7月と3回に分けてKF-RCから4頭ずつ子豚を持ってきたジョナンくん。4カ月目の8月からは、育てた子豚を販売し、KF-RCに子豚とその餌代を返していきます。ジョナンくんも循環型農業を実践するため、KF-RCと同じように豚にBM活性水を飲ませ、豚の糞尿をもとにした液肥(消化液)を活用し、お米を作りはじめています。畑の周りには、天然の資材を活用した小屋があり、ヤギ、鶏、アヒルなどもいて、“小さなKF-RC”のようになっています。耕作は、雨季にお米を、乾季には野菜を作る予定とのこと。
近所の人もジョナンくんが始めた農業に興味を示して見に来るそうですが、養豚だけに興味を持つ人が多いので、養豚を中心にした畑の循環について聞かれなくても話をしているそうです。ジョナンくんのお父さんに、卒業後の彼の様子を聞いてみましたが、かつては家族の問題児で、どこかにふらっと出かけては飲んだくれていたのが、今では一日の仕事の段取りを自分で考え、責任感を持って働き、よく家族を手伝うようになったのこと。今では、ジョナンくんが中心に働き、お父さんは手伝いをする程度になったそうです。
もうひとつ、バランゴンバナナの生産地であるパンダノン。日本にも来日した生産者のマカオさんの息子マージュンくんと、近所に住むマイケルくんの地域を訪問しました。
7月にKF-RCを卒業した現在、ふたりは豚舎を作るための準備を始めています。しかし、彼らの家の畑は村の中心地からかなり奥に位置します。そこまでたどり着く道は舗装されておらず、雨季に入った現在、四駆の車でも上がれないほど。私たちも、車があまりにもすべるので、途中で断念し徒歩で畑に向かいました。こんな調子なので、養豚建設のために資材を運ぶのに手こずっています。ただ、畑の横に今後豚舎を建設する場所はすでに整地されており、準備は万全でした。
マージュンくんのお父さんのマカオさんは、ふたりの成功を心より願っています。「村には仕事にも就かずにブラブラしている子や、砂糖キビ畑の労働だけで仕事を終えてしまう人が多いので、農業を多様化することで、農民として違う生き方ができることを知ってもらいたい。そして、そのことが地域を豊かにしていくと思っている」と話していました。KF-RCの卒業生ふたりの様子を見て、自分もやってみたいという子が出てきたら、またKF-RCに若者たちを送りたいということ。責任が大きいふたりですが、マージュンくんもそのことをよく理解している様子。お父さんの横でしっかり話を聞いていました。お母さんも彼の変わりぶりに驚き、家族のことをよく面倒にみるようになり、仕事も自分で考えてできるようになって、KF-RCに行かせてよかった、とても感謝しているということでした。残念ながらマイケルくんには村では会えませんでしたが、お父さんに少し話を聞いてみたところ「家族の手伝いをするために小学校すら行けなかったので、外に出して学ぶ機会を与えることができたことにとても感謝している」とうれしそうに話してくれました。
今回のバイス、パンダノンの訪問では、自信を持って村に帰った卒業生たちの成長振りを確認できました。彼らは、単に農業技術を学んだだけではなく、内面の成長を果たしたことが見て取れました。そのことが、今後自立した農民になるためにどれだけ重要なのかを実感。今後は、肥育した豚の販売など、新しい挑戦が待っています。KF-RCの代表アンボさんは、「引き続き、KF-RCで彼らのサポートを継続し、フォローアップの研修もしていきたい」と話していました。
報告:吉澤真満子(よしざわ・まみこ/APLA事務局長)