2013年12月17日、大型台風30号(ヨランダ)で被害を受けたネグロス島北部を駆け足で訪問してきました。
APLAは、バランゴンバナナを出荷しているオルター・トレード社(ATC)を通じたバナナ生産者への支援と、生産者以外でも被災した人たちへ支援が届くように、カネシゲファーム・ルーラルキャンパス(KF-RC)を通じて出会ったレコレトス会(スペインが拠点の修道会)による支援という、二つの緊急救援を応援することに決定しました。
今回の訪問では、レコレトス会のタゴイ修道士と共に、後者のネグロス島北部で被災したカディス市、エスカランテ市、サガイ市を訪ねてきました。
西ネグロス州の州都であるバコロド市から北上し、カディス市に近づいていくと、道の両側には片づけられた倒木や倒れかかっている電柱が目立ちはじめます。街の中に入ると、日常とは変わらないような活気があり、中心部は電気も通じはじめていました。しかし、現地視察前にタゴイ修道士から聞かされていた通り、台風被害後の緊急救援はアクセスのよいところを中心に実施され、辺鄙なところには行き届いていないということを実感しました。
今回の台風支援に関して、タゴイ修道士が考えている緊急救援の方針は、支援の届いていないところへ手を伸ばすということ、また一過性の支援ではなく持続可能なものにすること。そのために、現場で働いているグループやNGOと連携により実施したいとの話がありました。そのため、今回は現地NGOや教会などをめぐり、現状の確認を聞き取ることから始めました。
カディス市
カディス市では、地元のNGO「Cadiz my city my home」の案内で現場を回りました。「Cadiz my city my home」は女性たちのグループで、地元の独居老人やホームレスのお年寄りに家を作るという活動をしています。ヨランダの台風の1年前くらいから活動を始めましたが、台風被害にあい、地元での緊急救援活動も実施してきたそうです。彼女たちからの現状報告でも、やはり海沿いのアクセスが悪いところに支援が届いていないとのこと。教会にて神父さんからも聞き取りしましたが、同じ答えが返ってきました。そこで、早速海辺にあるスラム街と漁村を回ることになりました。
エスカランテ市
エスカランテ市では、教会から情報を得て、被災した家屋とチャペルを見に行きました。
サガイ市
サガイ市でも、多くのチャペルが被災したとのこと。その一つを訪ねました。サガイ市にはいくつかの宗教グループがあるところ、チャペルの多くが台風により崩壊してしまい、他のグループから揶揄されるなど、人びとの心が信仰から遠のいてしまうことを、サガイ地区の神父さんは心配していました。被災した地域の人びとの心の平穏をもたらすためにも、チャペルの再建が急がれます。
今回、被災地を一緒に回ったタゴイ修道士の言葉が印象的でした。「まずは人びとが何を求めているかを聞くことが重要だ」ということです。事実、現場を見て判断するタゴイ修道士の姿を見て、ニーズに合った支援を検討していることが伝わってきました。
また、エスカランテ市のジェリー神父は、今回の台風被災を受けて感じていることを話してくれました。「これまでずっと人びとは飢えていて、苦しい状況がずっと続いていました。ヨランダの被災を契機に、人びとは、この時だとばかりに助けを求める声をあげだしただけなのです。ヨランダ台風はきっかけに過ぎず、人びとが抱える問題はずっとそこにありました」と。80年代に活発だった社会運動の停滞などの状況を受け、教会の活動も後退してしまったことを嘆き、再度教会としてもヨランダ台風を契機に何ができるかを考えているとのことでした。
当初、APLAではヨランダ台風支援先にレイテ島を含んでいましたが、国内外のメディアが集中的にレイテ島の状況を報道したため、その他の島の被災地への支援が回っていないということです。こうした状況を受けて、タゴイ修道士より、パナイ島、セブ島北部、ネグロス島北部に支援を集中したいということだったので、現場の判断に任せることにしています。当初は、レイテ島にも支援をと呼びかけておりましたが、こうした状況をご理解いただき、募金をいただいた皆さまには、何卒状況をご了解いただけたら幸いです。
※HEARTanonymousのウェブサイト(英語のみ)では、支援状況が随時アップデートされています。写真も掲載されていますので、ぜひご覧ください。
報告:吉澤真満子(よしざわ・まみこ/APLA事務局長)