昨年度(2015年2月)、エルメラ県のコーヒー生産者グループFitun Caetanoで実施した水源保全活動。乾季まっただなかの8月末、フォローアップのワークショップを2日間にわたり実施しました。かなり時間がたってしまいましたが、ご報告します。
水は涸れていないよ
今年の乾季は東ティモール全土で厳しく、2月に皆で整備した泉の水は、残念ながら7月頃に完全に涸れてしまったとのこと。しかしながら、水源の下に造成した溜め池の水は涸れておらず、地下からちゃんと水が湧き出ていることが確認できました。また、柵になるように周囲に植えた木々の大部分がしっかりと根付いていました。「ボロ(保水力の高い植物)も枯れていないので、雨季に入ったら力強く育ち、水をしっかり蓄えてくれるだろう」と講師のエゴさん。
その後、水源の上方の傾斜地に広がるコーヒー畑とさらにその上にある集落の方までをみんなで歩いて観察しました。「コーヒー畑の中にもテラスをつくって、雨季に入ってから水が勢いよく流れ落ちないしかけをすべき」というのがエゴさんからの提案。また、東ティモールの農村では、雨季の直前に草を焼いて、そこにトウモロコシなどを植えるという慣習が根強く残っており、実際に、すでに焼かれているところも見受けられました。エゴさんからは、メンバーに対して「草を焼いたら、土の肥沃さがなくなってしまう。草は大切な肥料になるから、焼いてはいけない。Fitun Caetanoのメンバーが地域の他の人たちの手本となってほしい」とアドバイスがありました。
さらに、いま(乾季)のうちに整備をしておいた方がいい、ということで泉の中にたまった泥を掻き出し、今後たまらないように、泉の底に大きな石を敷き詰める作業に取りかかりました。その前に、2月同様、地域の慣習的な儀式を執り行うことに。鶏を1羽絞め、長老が占ったところ「雨はもうしばらく降らないが、泉の水は枯れない」との結果が出て、一同ほっと一安心。儀式を終えて、男性メンバーが中心に作業を進めました。
男性も女性も子どもみんなで
2日目、作業の前に、メンバーを呼び集めてのレクチャーが開かれました。エゴさんからは、「水は乾いていないということ、手入れを続けていけば(木を植え続ける、上方部の斜面にテラスをつくるなど)あと2年ほどすれば、乾季の間も水が枯れないはず」と改めてメンバーへの叱咤激励が。そして、今後も水源保全を進めていくために新たな提案として、整備した泉に日陰をつくってくれる植物棚を設置することが伝えられました。
竹で骨組みを作って、ハヤトウリや豆系などの蔓をのばす野菜を植えれば、日陰もできるし、食べものも生産できるし、一石二鳥!ということで、屈強な男性たちを中心に、地域に生えている竹を切り出し、骨組み作りに取りかかりました。そのカタナ(山刀のことをカタナと呼びます)捌きたるや見事なもの。釘などを使わなくても大丈夫なような切り込みを入れて、組み立てていきます。竹同士を縛って固定するためのヒモも、カタナで竹を細く細く割って、裂いて手作りします。棚が完成した後は、植物を植えられる用に周囲の土を堀り、枯れ草や牛糞などをしっかりと鋤きこんでいきます。そうした仕事に女性や子どももうまく巻き込んでいくのがエゴさんのやり方。この場所は、地域みんなで守っていくものですからね!
この場所が今後どんな風に守り育てられていくのか、引き続き見守っていきたいと思います。
報告:野川未央(のがわ・みお/APLA事務局)
※このプログラムは、地球環境基金の助成を受けて実施しています。