2016年10月、フィリピンと東ティモールの若手農民の交流プログラムを実施しました。目的は、お互いの知恵や経験、悩みなどを共有し、将来につながる気づきや学びを得ること。東ティモール・エルメラ県の3人の若手農民が、フィリピン・ネグロス島のカネシゲファーム・ルーラルキャンパス(KF-RC)を訪問し、一週間にわたって様々な体験を通して、学び合いました。
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交流の後半は、KF-RCで研修を受けた若者たちが、卒業後に自分たちの地域でどんな風に農業を実践しているのかを見学するために、2つの地域を訪問しました。KF-RCから、トラックの荷台とバイクに分譲して出発です。
まずは、スタッフのジョネル(第1期研修生)の実家であり、彼のお兄さんのジョナン(第3期研修生)が循環型農業を実践しているバイスに。車が入れる道路から、約1時間。楽しくおしゃべりしながら、ハイキング気分で、サトウキビ畑を抜けて、小川を渡り、緩やかな山道をのぼっていきます。
豚舎で豚を飼育し、畑と田んぼ、そして魚の養殖池という循環型農業をしっかりと実践しており、卒業生の中でも一番成功しているのがジョナン。KF-RCとは違う小規模での養豚といえども、東ティモールの3人にとっては、まったくレベルの違う世界。大きく育った豚の姿に感嘆の声をあげつつ、病気の対策や餌のことなど、熱心に質問をしていました。
逆に、ジョネルとジョナンからは、「細々と植えているコーヒーの収量をあげるための方法を教えてほしい!」というリクエストがあり、東ティモールのメンバーがカットバックの方法を伝授することに。彼ら自身もつい3年ほど前に専門家によって教わった技術なのですが(詳細はこちら)、最初は自分たちも懐疑的だったにもかかわらず、それを堂々と伝えている様子が頼もしくもあり、微笑ましくもありました。特に、実践に基づいてこそ語れる細かな注意点(カットバックした木が腐らないように、切り口が、地面に対して鋭角で切り口がスムーズである&切り口に太陽があたるような方向を考える必要性など)をしっかり伝えている姿を見て、エルメラでこの技術がしっかりと定着しつつあることを実感しました。
翌日は、KF-RCから車で2時間以上かかるパンダノンという地域に。ここも、バランゴンバナナの生産地であり、第4期生のマイケルが農業を実践している地域です。途中大雨に降られたので小さな教会で雨宿りし、小雨になったところをドロドロにぬかるんだ道を歩いて山の上のマイケルの家に到着。そこで、マイケル本人から、卒業後これまでの経過についての説明をしてもらいました。
一時期は、豚の餌を買うお金がなくバコロドにハウスボーイとして出稼ぎに行ったことがあるマイケル。「また出稼ぎに行きたいか?」という質問に対して、「ハウスボーイの仕事が嫌というわけではないけど、行きたくない。だって僕は農民だから!」という答えにはみんな拍手喝采。東ティモールのメンバーからは「KF-RCで学んだことをすべて実践していてとても尊敬する。東ティモールでもこういう若者が増えるように、道のりは厳しいが頑張りたい」「とても沢山の種類の果樹や野菜を育てているし、豚舎、養殖池と循環型農業を実践しているのが素晴らしい。手本にしたい」という声があがっていました。とても良い刺激を受けたようです。
余談ですが、「収入が安定しないまま結婚して、家族ができたら、頑張って育てた豚も魚もいなくなってしまうから、今はまだ結婚したくない」という(ネグロスの若者らしからぬ)マイケルの言葉が印象的でした。
報告:野川未央(のがわ・みお/APLA)