足を運び、じっくり対話して、これからの民衆交易を共に考える
フィリピンのネグロス島には、カネシゲファーム・ルーラルキャンパス(KF-RC)という約5.5haに広がる農場があります。KF-RCは、農場であると同時に、地域の若者たちを受け入れる農業の実践・研修学校でもあります。毎年若者たちを研修生として受け入れ、次世代の教育、農を軸にした地域の発展を目指しています。
地域訪問の様子(前回記事)はこちら
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KF-RC卒業生の父親にインタビュー
【アレックス・リアネスさん(第四期生マイケルくんの父親)】
ここの土地は先祖から受け継いできた土地。
私もここを次の世代に継いでいかなくてはいけない。私なりに工夫をして耕し、よりよくしてきた。セミナーなどの研修にも参加した。そのほとんどが高い技術なものでここには適していないものだった。そして有機農業に出会った。これこそが持続的なものだと思った。化学的なものを使えば、もちろん一時的には生産量がふえて良いかもしれない。しかしいつかはダメになってしまうかもしれない。子どもたちやこれからの世代のことを思えば、結果的に自分たちが損をすることにつながる。
若者たちにこの地域で活躍をしてもらいたい。
それもあり、息子のマイケルをKF-RCに送った。彼には本当に申し訳ないことをしたと思っているが、彼が小さいときに私は病気をし、思うように働くことができず、学校に行かせることができずに畑で働いてもらい、他の兄弟を学校に送るために街に働きにも行ってもらった。無理をすれば彼も小学校へ通わせることもできたかもしれないが、他に兄弟のこと、家庭のことを考えると、金銭的に崩壊をしてしまう可能性があったため、申し訳ないが家族のために働いてもらった。
やがて私も思うように働けるようになり、マイケルに「また学校に通いだすか」と聞いたが、周りの小学生と比べて自分だけ大きい中で学校に通うという事を彼が嫌がり、そのまま働き続けた。マイケルは今では農業が好きで、農家であることを喜んでいる。私はそんな息子を誇りに思い、自慢の息子と思っている。
KF-RCに送り出すときに息子に「お前は周りと比べて農家である時間が長い。KF-RCに研修をしに行くのだが、自分が何か教えられることがあればそれは伝えてくること。自分が何のために研修をしにいくのか常に考えながら過ごしてくること」と伝えた。
舌でも理解したオーガニックの良さ
研修から息子が帰ってきて、まず驚いたことは息子が作るラスワ(フィリピンの家庭料理のスープ)の味が以前と違かったこと。私はこのとき初めてオーガニックの良さを舌でも理解した。それからも本当によく働き、家族のサポートをしてくれている。繰り返しますが自慢の息子です。
報告:寺田俊(てらだ・しゅん/APLA事務局)