2011年、東ティモールでは、コーヒーの収穫量が昨年との比較で1/2~1/3と大幅に減少しました。裏作年ということもありましたが、前年の乾季に長雨が続くという異常気象により、花の大半が落ちてしまったことが原因です。一方で、供給量の大幅減によりコーヒー豆の市場価格が高騰したこともあり、収入としては(世帯差はあるものの)例年の1/2~2/3くらいにとどまりました。とはいえ、収穫シーズン終了直後の9月には、農民から「数カ月でコーヒーによる収入が尽きてしまう」という不安の声があがっており、オルター・トレード・ティモール社(ATT)には、来年のコーヒー代金の前払いを年内にしてほしいという要望が続々と届けられました。
こうした状況を受けて11月に現地に入り、生産者に聞き取りをおこなった結果、12~1月には現金が底を尽き、食べ物すらないような状況が出てきてしまう可能性があることが明らかになりました。ATTからも自分たちが実施するコーヒー代金の前払い以外にも、米の支給を緊急救援という形でできないかという相談がAPLAにあり、様々な検討を重ねた結果、エルメラ県の12グループ(209世帯)に対して、米の緊急支援をすることを決めました。
APLAとしては、前身団体である日本ネグロス・キャンペーン委員会(JCNC)長年の経験からも、生産者たちの自立のためにはこういった「モノの支援」がいつまでも継続されるのは好ましくないと考えます。そこで、米の支援は基本的に今回限りのことで、今後は自分たちで自助できるように生産者グループの組織化や貯蓄プログラムを行っていくという目標を共有したうえで、各グループに米の配布を実施することになりました。2カ月分で一世帯60キロというのは決して十分な量だとはいえませんが、ATTスタッフが雨季の悪路のなかを奔走し、各グループのコミュニティリーダーの働きもあって、無事に年末までに全世帯にお米を届けることができました。コーヒー生産者たちからは、感謝の声が届いています。APLAはこれまでFitun Caetano(フィトゥン・カイタノ)とGATAMIR(ガタミル)の2グループで実験的に収入の多様化や自給作物の栽培などをめざす取組みを進めてきましたが、別のコーヒー生産者グループからも「自分たちの地域でもがんばってみたいので、ぜひ協力してほしい」という声も寄せられています。
言葉通り「ピンチをチャンスに」変えて、今後同じような厳しい状況に直面したときに、ただ外部からの支援を待つのではなく、自分たちの力でそれを乗り越えていけるような地域にしていくための挑戦がそれぞれの場所ではじまる年になりそうです。みなさんの知恵や力もぜひ貸してください!
報告:野川未央(のがわ・みお)