2018年度から、ATJのコーヒー産地であるラオス・ボーラヴェーン高原における作物の多様化に向けて取組み始めました。きっかけとなったのが、2017年度に実施した3カ国若手農民交流(フィリピン、東ティモール、ラオス)です。
この取組みの第一歩として、2018年9月、P-nong Learning Centerにご協力いただき、ボーラヴェーン高原の若手コーヒー生産者をタイ東北部のカオデーン農園(注)での研修に送りました。
研修の参加者5名のうち2名は、3カ国交流に参加したシットさん(23才)、タイさん(21才)。そして残り3名は、カムさん(20才)、ノさん(21才)、パットサヤさん(20才)で、5名全員が20代前半の女性となりました。参加者は、現地のジャイコーヒー農民協同組合(JCFC)幹部と、長くラオスに通っている研究者でありAPLAの理事でもある箕曲有弘さんが面接をして決定しました。
約2週間の研修は、5人の参加者が、自然・循環型農業についての基礎的な考え、農畜複合農業や加工品販売などについて学ぶ機会を作ることを目的として、タイのオルタナティブ農業ネットワーク(AAN)にも協力してもらい、【1】始まりのワークショップ、【2】農業技術の実習、【3】フィールド・トリップ、【4】生活用品作り、【5】まとめのワークショップ、という構成で実施しました。
カオデーン農園から送っていただいた報告から、まとめのワークショップについて一部を抜粋して紹介します。
「収入はいくらあっても足りない、もっと欲しいと感じるものである。実際に、東北タイの農家の何倍もの利益がある参加者たちも、コーヒー栽培には費用がかかるので、時期によっては足りないと言っていた。改めて「足るを知る生活」「充足した暮らし」とは何かという質問をすると、家族が一緒に食卓を囲めること、健康であること、団結すること、食材を身近な場所から調達できること、節約すること、農園内のものを工夫して売ること、などの回答が返ってきた。今でも部分的には近い状態にあるけれど、それを意識していなかったとのことだった。意識してその状態を保とうとすると今後の判断や行動が変わってくる。迷ったときに、何を基準に判断するか。自分たちにとって何が重要なのか。参加者はそれを認識することができたようであった。」
「コーヒー栽培による収入と家計だけを考えていると、ラオス国内ではコーヒー農家は富裕層という位置づけで、特に何かを変える必要性は感じていない農家が多い。しかし、「持続可能な農業」や「環境」という視点を持つと、単一換金作物の問題点に気づく。今回の参加者は、2名はこれまで持続可能な農業の研修に参加していたので、頭では理解しているようであった。初めて研修に参加した3名にとっては、新しく学んだことが多く、どこまで理論的なことを理解しているかわからないが、少なくとも、全員が、「自分の農園内で食べたいものを作る」ということには明らかに前向きな意向を示していた。それが副収入にも繋がることには大きなモチベーションにもなるようであった。」 |
研修終了後、参加者5名はそれぞれ学んだことを自分の家で実践を試みているところです。年明け2019年2月には、カオデーン農園のデーンさんとAANのリーダーの方に参加者たちの暮らす地域を訪問してもらい、フォローアップ研修を実施する準備をしています。ぜひ活動へのご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。
注:日本国際ボランティアセンター(JVC)が以前バンコク郊外で行っていた自然農園プロジェクトの研修生だったコムサンさん(通称デーンさん)が、NGOの自然農業普及員の経験を経て、元JVCタイ駐在スタッフの森本さんと共に2006年に東北タイ・ムクダハン県でスタートした農園。
※本活動は、りそなアジア・オセアニア財団の助成をいただいて実施しています。