2019年10月、ミンダナオ島コタバト州でマグニチュード6規模の地震が相次いで発生しました。特に10月31日の地震ではコタバト州マキララ町のバランゴンバナナ産地で大きな被害が発生し、緊急支援金として3万米ドル(日本円換算で330万6000円)をバナナの出荷団体であるドンボスコ財団に送金しました。詳細は こちら をご覧ください。
ドンボスコ財団より、詳細な進捗報告が届きましたので、3回に分けてお伝えいたします。
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ブハイ村の状況
<救援活動>
ブハイ村のイスラム教徒のコミュニティの中には、家畜や所持品を守るため地震直後に村に残った人々がいました。村の外から車で乗り込み、避難所に持っていくことのできない家電製品などを盗み出す略奪者がいたためです。鉱山地球科学局(MGB)によって設置された「立ち入り禁止」の看板を横目に、ブハイ村に残った人々を訪れました。医師を伴って怪我の手当てをし、医薬品や米、その他の食料を持参しました。彼らからは地震・地滑りで被害を受けた湧水の補修のためのパイプの要望を受け、ATJと一緒に訪問した際に持参し、水道はすぐに修復できました。
また、避難所に移った先住民族とイスラム教徒のマラナオ族も訪問し、医療ミッションを実施しているグループを紹介しました。
<移転地での復興>
ブハイ村では移転場所のための土地が不足しています。移転先として適した土地は、入植者(ビサヤ人)が所有しており、当然のことながら政府への土地売却に同意しないか、高額の売値を提示しています。 インボク首長率いる先住民族コミュニティが現在いる避難場所の土地は、1ヘクタールあたり100万ペソ(約215万円)で、3ヘクタールが売りに出ています。政府は、地震により住居を失った先住民族のバゴボタガバワ族やイスラム教徒のマラナオ族、ビサヤ人の再定住地としてこの3ヘクタールの買い上げの交渉と処理を進めています。この土地への移転は、MGBによって検査され、国家住宅局(NHA)によって承認されています。
<移転先で抱える課題>
土地購入のプロセスが完了すると、土地は小区画に分割され、各家族に基本的な設備を備えた家が無料で提供されます。比較的平坦なため地滑りの可能性は低くなる一方、別の観点での安全性の問題があります。四方が慣行栽培のバナナプランテーションで囲まれており、それらのプランテーションで大量に投与される農薬による毒性の問題です。女性と小さな子どもたちにとっては、これらの毒性に曝されることは、将来爆発するおそれがある時限爆弾を抱えているようなものです。この健康リスクは深刻です。
また、インボク首長のコミュニティは、先住民族のための専用の土地か、もしくは少なくともイスラム教徒のマラナオ族コミュニティからは離れた場所に移住することを望んでいます。彼らが従来の暮らし方である養豚や犬を飼うことを継続することは、イスラム教徒のコミュニティにとっては大きな禁忌事項だからです。これも、潜在的な時限爆弾と言えます。
<代替案>
私たちはインボク首長に元来先住民族が暮らしてきた地域内での移転について提案しています。その土地は所有権がないため、NHAからの「無償の家」の提供は受けられません。しかし、いくら無償の家があっても、長期にわたって有毒な農薬に曝される危険がなくなることはありません。今の時代を生きる彼ら、そして彼らの孫や子孫の世代にもわたる健康を考えて、政府からの無償提供の家は諦めることにしました。第一、政府から提供される家というのは、持続可能な原則に基づく適切な設計のものではありません。家同士が近接しており、裏庭で家畜を飼うことができません。
地方自治体およびNHAによる家屋建設の条件は土地の所有権があることが前提条件であるため、居住権を認められているだけの先祖伝来の土地は対象になりません。したがって、唯一の選択肢は、先祖伝来の土地の中で、リスクがゼロないしは低い土地区画を購入することです。
幸いなことに、移住者が所有する先祖伝来の土地内にある3ヘクタールのバナナ農場の使用権が、15万ペソ(約32万円)で売りに出されています。またそれに隣接する3ヘクタールのアバカ農場の使用権も15万ペソで売りに出されています。飲料水や養魚池、農業用に使用できる水もあります。この土地には、再定住先のない家族や、今までの土地では危険性が高く家を再建できない80家族以上の先住民族の家族が移転して、家を建て、裏庭で畑を作ったり、家畜を飼育したりし、共同の養殖池などを作る予定です。コミュニティとして自分たちの事務所、教会、ホールなどの建設もできます。
彼らはすでに先祖伝来の土地内に移住することに同意しており、ドンボスコ財団は、日本からの支援金をこの土地の使用権の購入費用と建設資材の購入にあてました。
この土地での家の建設に関しては町にも届け出ており、MGBによる調査の依頼、さらには所有権がなく使用権のみの土地でもNHAや町の支援を受けることができるかどうかを確認する予定です。
コミュニティ開発と変革
ドンボスコ財団では、バランゴンの生産に留まらず彼らと一緒に活動するために、トレーニングとコミュニティ活動のための場所づくりを目指しています。リプロダクティブ・ヘルス、公衆衛生、そしてもちろん農業生態学や環境教育など、他の多くのライフスキルについて学べるきっかけを作り、アポ山を守る民となれるようにしたいと考えています。
先に述べたように、地震とコロナ感染拡大のパンデミックによる損害は大きいものですが、同時によい機会をもたらしました。コロナ禍で他の作物(コプラ、ゴム、切り花など)の取引が停止しているにもかかわらず、バランゴンの出荷は続き、多くの人が、その持続可能性と強さを認識しました。一般的な商品取引とは違う民衆交易の安定性が浮き彫りになりました。
当面の課題は、家屋や生活空間の復興ですが、アグロエコロジーや複合的で多様な有機農業システムの中にどうバランゴン生産を組み込んでいくかも課題です。バランゴン栽培に取り組む生産者が増えるということは、持続可能で環境に配慮した社会的責任のある生活を送る人が増えるということでもあります。苗が不足する中で、農民は自分たちの既存のバランゴンから苗を分けて生産の拡大に取り組んでいます。ブハイ村では、バランゴン栽培への関心が急激に高まっているため、ドンボスコ財団では新たにバランゴン栽培を始めたいという人へも苗を配布し、バランゴンの民衆交易の仲間に加わってもらっています。このことにより、地震とこの激しいパンデミックからの復興及び再建は、長期に渡って持続可能であり、より包括的なゴールを持ったものとなります。
ATJやAPLAを通した日本のみなさんからの支援金とPT Coopとドゥレ生協を通した韓国の消費者からの支援金に支えられて生産されたバナナが出荷されるとき、再びアジアのパートナーとの循環の輪がつながるでしょう。言葉は関係の本質を捉えるには十分ではありません。生産現場であるコミュニティでは感謝の気持ちで溢れています。心の底から「Thank you」、「Salamat(現地語で「ありがとう」)」、「ありがとうございます」。日本ありがとう!韓国ありがとう!アジアのパートナーたちの皆さん、ありがとう!
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