2024年1月6日から10日、フィリピン・ネグロス島を訪問してきました。ぽこぽこバナナプロジェクトとしての訪問で、バランゴンバナナの生産現場を見学するとともに、現地でどのくらいのバナナが廃棄されているのかを知るのも目的でした。
報告①では、どんな圃場を訪問したのかをお伝えします。
まず訪問したのは、西ネグロス州の州都バコロド市から車で東へ2時間半ほどの位置にある、サンカルロス市のコドコドという生産地です。この地域では、全部で34家族がバランゴンバナナを栽培しています。私たちが見学した圃場は2カ所で、それぞれ900株、1200株のバナナを育てていました。バナナの植え付け、袋がけ、収穫、買い付けを見学することができました。
この地域での買い付けは月2回ほど。私たちの見学時は、50株分ものバナナが集まっており、サイズや傷などをチェックしながら、手際よく選別と買い取りが進んでいきました。ある生産者は、1カ月で約1万ペソの収入になると教えてくれました。これは、1カ月分の食費が大体まかなえる金額だということで、バナナからの収入が大きいことがわかりました。生産者にとって、きちんと現金で支払われることも非常に重要な点だということです。
私は青いバナナをこんなにもたくさん見たことがなかったので、せっかくだからと、基準に満たず買い取られなかった青いバナナがどんなものか試してみることにしました。硬くて全然割れませんでした。ナイフで切ってもらい、少し味見を。とても渋くて、とてもじゃないですが、食べられません(注)。「バナナが渋い」という初めての経験をしました。
翌日は、別の圃場へ。こちらはバコロド市から北へ車で1時間ほどのところにあるシライ市のランタワンという生産地です。この地域にはLUFISFAという生産者組合があり、36の生産者が参加しています。合計で1万株ほどのバナナを栽培しています。こちらでも2カ所の圃場を訪問し、栽培管理、収穫の様子を見学しました。
足場の悪いところでもハシゴを立てて身軽に袋がけする様子や、重いバナナを次から次へと持ち上げて運んでいる生産者の皆さんの姿を見て、どこからそんな力が出るんだろうと驚きました。私も運ばせてもらいましたが、足場が悪いところを歩くのは大変でした。
生産者の皆さんは、バランゴンバナナ以外のもの、例えば、カカオ、マンゴー、グアバ、ココナッツなどの多様なフルーツを育てていました。バナナを見学に行って、カカオの実の収穫体験もできたのはラッキーでした。ある生産者は、バナナの収入とその他の収入が半々くらいだと言っていました。いろいろな種類の作物を育てた方が台風などの被害にあった時のリスクを抑えることができ、生活を守るのにつながります。
池で淡水魚を育てている生産者もいました。さまざまな動物も見かけました。犬、猫、鶏、七面鳥、アヒルなどです。バナナだけでなく、さまざまな植物、動物と、普段の生活ではなかなか体験できない空間にいられて、なんというか、豊かな、幸せな気持ちになりました。
皆さんに気候変動の影響を感じているかどうか、質問してみました。
・以前より台風が増えている→バナナが倒れてしまう。
・エルニーニョ(日照り)→成長に大事なバナナの葉がダメになってしまう。
・雨季と乾季のタイミングが崩れている→予定していた作業が行えない時がある。
・スコールみたいな豪雨が降る→病気になりやすい。
以上のような理由で、バナナの生産量が安定しないということでした。台風などの被害があると、日本の皆さんから支援をいただけることが多いが、頼ってばかりもいられないので、苗を植えるタイミングをずらし、成長過程をバラバラにしたり、肥料の費用を自分たちでもまかなったり、自分たちなりに対策を立てたり、費用を工面したりしているということでした。
ほんの2つの生産地を見ただけですが、気候変動への対処も含め、バランゴンバナナが私たちの手元に来るまでは大変な手間がかかっており、またバナナ生産者の思いも込められていることがわかりました。
報告書②では現地の廃棄の様子をご報告します。
報告:福島智子(ふくしま・ともこ/APLA事務局)
注:日本に青いまま届けるためには、熟度が80%ほどの時点で収穫する必要があります。