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2024年8月25日〜9月1日フィリピン・ミンダナオのバナナ産地を訪問するツアー報告(その1)

11名の参加者の皆さんと一緒に濃密な時間を過ごした1週間。とてもじゃないけれど全てを語り尽くすことはできませんが、印象的なできごとを振り返ってみたいと思います。
初日&2日目
今回のツアーはミンダナオ島のダバオ空港集合でスタート。ダバオは、メトロ・マニラ、メトロ・セブに次ぐフィリピンで3番目に大きい都市で、普段から車の渋滞も激しいのですが、到着した日はたまたま空港近くで大きなデモがあったようで、空港の敷地から幹線道路に出るまでに1時間弱(!)もかかるという滅多にない体験から始まりました。そのおかげで大遅刻をしてしまいましたが、元スミフルのパッキング工場の労働者のお二人と一緒に夕食を囲み、これまでの体験や現在の状況についてお話を聞きました。いわゆる大手バナナ会社の操業方法に関心がある参加者の方も多く、たくさんの質問が飛び交い時間が足りないほどで、お二人からは「状況は厳しいけれど、こうやって関心を持ち続けてくれている人たちがいることが励みになる」と。
翌日は、長距離移動の日。「マグロの首都」と呼ばれるジェネラル・サントス市(ジェンサン)を経由し、途中で「フルーツ王国」ミンダナオならではのフルーツスタンドで、ドリアン、マンゴスチン、ランソネスなどの日本では滅多にお目にかかれない果物に舌鼓を打ちました(が、このあと1週間の滞在中に「もう十分です…」となるタイミングが何度かやってくるのですが)。そして、向かったのはツピ町のバランゴンバナナ生産者団体であるTUBAGAの事務所。ここでも、たくさんのフルーツ(理事さんたちが自分の畑から持ってきてくれたもの)やバナナのケーキをいただきながら、バランゴン生産のモチベーションや直面している課題についてじっくり話を聴かせてもらいました。参加者の皆さんの好奇心がとっても旺盛で質問が止まらず、予定していた時間を大幅に超過して、事務所を後にしました。次回は、事務所だけでなく、生産者さんのバナナやフルーツの圃場も訪問させてもらおうと思います。
ツピ町を出発し、今回のツアーのメイン目的地であるレイクセブ町に向かう道中はすっかり暗くなっていましたが、セブ湖のほとりのホテルでは、バランゴンバナナ生産者団体のUAVOPIのジェームスさんとシッドさんがお出迎えをしてくれました。翌日からの予定を確認して、おやすみなさい!
3日目
まずは、町内の公設市場を見学。野菜や果物、肉や魚(レイクセブはティラピアという淡水魚の養殖がさかんです)、そして日用品など、地元の暮らしの一端をのぞかせてもらいました。ちなみに、レイクセブは、ティボリ族やオボ族などの先住民族が多く暮らす地域ですが、市場で働く人のほとんどは、イロンゴ語(ヒリガイノン語)の話者、つまりイロイロ州や西ネグロス州にルーツを持ついわゆる移住民の人びとでした。
市場を後にして向かったのは、UAVOPIのシッドさんのセミナーハウス。シッドさんとジェームスさんから、レイクセブにおけるバランゴンバナナの民衆交易の歴史や意義、現在の課題等についてのオリエンテーションがあり、若手のバランゴン生産者の皆さんと交流を持ちました。一緒に昼食をとりながらのコミュニケーションを通して、彼/彼女たちの母語であるティボリ語を教えてもらった参加者の皆さんもいました。そして、午後には、日本に届く前にはじかれてしまうリジェクトバナナ(規格外バナナ)を使って、アイスクリームやバナナチップスを一緒に作るというお楽しみの時間を持ちました。
4日目
この日は、レイクセブ町のお隣に位置するティボリ町を訪問。ティボリ町は、元日系企業であるスミフル社のバナナプランテーションが広がる地域で、以前から農薬の空中散布の問題なども指摘されています(詳細は、ATJのレポートをご覧ください)。今回は、両親の時代から同社に10haの土地をリースしているというJさんにお話を伺うことができました。スミフル社と25年のリース契約を結んでいるJさん、残り期間はあと5年ほどだということですが、その後に再契約するつもりはないようです。土地のリース料が安すぎるため、すでに契約期間を終えた周囲の人の中には、DOLE社とのパイナップルの栽培契約に切り替える人も多いのだとか。その理由としては、短い契約期間(3年半)、年に2回の収穫、という点が挙げられていましたが、色々お話を聞くと、こちらも問題は山積みのようです。
Jさん自身は、リースしていない自分の土地で多種多様な果物やココナッツなどを栽培しており(どれも大変美味しくいただきました!)、現在バナナ農園になっているところも将来的にはそうした多様な農園に転換したい、そうでないと持続可能ではない、と考えているようでした。しかしながら、リースしているバナナ農園の中を見学させてもらいましたが、バナナの茎は農薬でピンク色、土はコンクリートのようにカチコチになっており、仮に契約を終えたとしても、他の作物を栽培できるように土を戻していくのにいったいどれだけの年月が必要なんだろう…という純粋な疑問も浮かんできます。そして、日本で販売されているバナナの大多数がこういった農園から届いたものであることについて、あまりに知られていない、そのこと自体が大きな課題、という声が参加者の皆さんからあがっていました。
報告:野川未央(のがわ・みお/APLA事務局)
その2につづく)