APLAの北部ルソンでのパートナーのCORDEVでは、2009年にBMWプラントを導入しましたが、使用していた施設の立ち退きを要請されたため、2013年5月、新たな敷地にBMWプラントを設置しました。6月の訪問時には、その完成の状況確認とBMW技術に関するセミナーが実施されました。
BMW技術のセミナーでは、BMW技術協会の秋山さんより生態系が作り出す水の浄化作用を人工的に再現するBMW技術についての講義が行われ、持続可能な環境を維持するためにいかにこの技術を使っていくかが説明されました。参加者の水への理解が深まったとともに、今後、地域内でどう活用していくかが課題として残りました。まだまだこの地域での技術を活用した実績が少ないため、まずはCORDEVのメンバー内で使ってみて効果を見てみて欲しい、と話をしました。
質問では、糞尿や堆肥から浄化された水をなぜ家畜が飲めるのか、という点がまっさきにあがりました。また、CORDEVメンバーがいる地域は慣行農業が盛んで、農薬が多用されている地域です。そうした状況から有機農業に転換することへの難しさがあるなかで、BMW技術と農薬を一緒に使うことの影響などを心配する質問がでました。
新しいBMWプラントが設置された敷地は、一番近い町であるカウヤン市から車で約30分のところですが、その道中は遺伝子組み換えトウモロコシ(Btコーン)が広大な土地に広がっています。ここ数年でこの地域でのBtコーンの植え付けが始まったそうですが、今後この地域における種子汚染や農薬被害などが心配されます。CORDEVは、この地域における有機農業の推進母体になることを期待されており、地元行政とも連携を取ろうとしていますが、一方で農業の大規模化かつ単一栽培を後押しする遺伝子組み換え作物が推進されているのも事実です。今後、有機作物と遺伝子組み換え作物という相反するものが存在することで難しい課題が生まれてくることが予想されます。地元の人たちは遺伝子組み換えの実態をあまり知らずにいるため、今後は情報交換も重要になるでしょう。
2012年にBMWプラントが設置されたもう一つの場所、ヌエバビスカヤ州のマラビン渓谷にあるギルバート農場へも行きました。ここは柑橘栽培の農家が集まる地域です。本来であれば6月は雨季のはずにもかかわらず全く雨が降らないことや、昨年までは限定された品種のみに起こる虫害がすべての品種に深刻な影響を及ぼしており、この地域の特産である温州みかん(現地ではサツマと呼ばれている)の収量も減っています。これまで使っていた農薬も効かなくなっているとのこと。異常気象が及ぼす影響について心配の声が上がっていました。
ここでもBMW技術は何であるか、というセミナーを実施し、これからこの技術を活用する仲間たちと一緒に勉強をしました。この地域では、農薬による汚染の影響からか、川にいた小さな生きものたちが消えてしまったという話しも出ました。これまで慣行農業で柑橘栽培をし、成功してきた農家たちにとって、今起こり始めている虫害や気候変動は大きな心配の種です。CORDEV同様、今後はこのマラビン地域も有機農業推進地域に指定されるとのことで、農薬に頼らない農業や地域の自然循環をどう取り戻していくかが課題です。そのなかでもう一度BMW技術を位置づけ直し、活用することで、柑橘栽培にどういった効果がもたらされるか、また野菜の植え付けも始めて作物の多様化をしていくことについて話されました。
今後は、実践の積み重ねと、何よりも関わる仲間たちがもっと環境や農業のことについて知る機会を増やしていくことが大切だと感じました。
報告:吉澤真満子(よしざわ・まみこ/APLA事務局長)