2013年9月、福島市内にある4つの施設を訪問しました。また、南相馬市の原町聖愛保育園では、バナナ生産者が子どもたちとの交流をしました。
福島わかば幼稚園
この日は、ちょうどバナナが届いた日。様子を見ていると、食べ終えた子から「先生、バナナもっと食べたい」との声がちらほら。子どもたちに大人気ということが早速伝わりました。約200人の園児がいるわかば幼稚園には、とにかく明るい声が響き渡っていました。
化学調味料、冷凍食品ばかりのお弁当は体によくないため、原発事故の前から園内で食について考えていたそうです。現在は、いろいろなところと提携して、子どもたちに給食を提供しています。また、よその幼稚園と同様、園庭の土の入れ替えをしたり、普段の仕事以外にも気にかけなければいけないことが増えました。それでも、少子化と原発事故の影響で少なくなった園児の数は、少しずつ増えているとのことで「今は子どもたちが多く、てんやわんやしている」と、明るく話してくれる先生の笑顔が印象的でした。
隣保館保育所
福島駅から歩いて数分、可愛らしいカラフルな色の施設が隣保館保育所です。福島市では、震災後に減ってしまった子どもが戻ってきていて、待機児童がいるとの話がありました。ここも、現在は定員よりも多い子どもを抱えています。
給食で使用する食材は県外産のものですが、園庭では、野菜や果物を育てています。もともと福島は野菜や果物が美味しい県。それが少しでも子どもたちにも伝わるようにと、栽培していますが、持って帰る人は少ないそうです。地域では、除染をしていないところがあるため、散歩ができない場所もあるとのこと。“自然が豊か”という福島の良い面があだとなった事故だとおっしゃっていました。
今回は、子どもたちが歌とダンスを披露してくれました。多目的ルームが壊れてしまうのでは!?と思うくらい元気いっぱいでした。先生も袖を肩までめくり、汗だくになりながら教えています。その姿を見て、保育に対する情熱や、園児に対する愛情を感じました。子どもたちがあれだけパワフルなのは、この先生たちの姿を見て育っているからなんだろうなと感じます。という私も、たくさんの元気をいただきました。
原町聖愛保育園(バナナ生産者の訪問)
2013年1月にバナナのワークショップを実施した原町聖愛保育園。今回は、来日中のフィリピン人3人(ミンダナオ島のバナナ生産者ビクター・コルテスさん、ミンダナオ島の地域オーガナイザーのジェイムス・シモラさん、オルター・トレード社(ATC)のパオロ・ギニャボさん)と一緒の訪問となりました。
子どもたちの多くが、初めて会うであろうフィリピン人。そして、その中にはいつも食べているバナナをつくっている生産者が。園児からは、時間が足りないくらいたくさんの質問があがりました。フィリピンの3人からは歌と踊り、子どもたちからは歌と鼓笛の披露があり、そのあと一緒にお昼ごはんを食べました。ごはんの準備をするとき、生産者たちが驚いていたことがあります。それは、園児全員が、テーブルを並べたり、ごはんを運んでいたことです。一人ひとりが、自分でできることは自分でやるという姿に、とにかく感心していました。この日のデザートは、バランゴンバナナ。実は、ビクターさんの住む地域のものです。「いつも食べているバナナも、つくっている人や関わっている人と一緒に食べるとこんなに美味しいんだ」と、改めて顔と顔の見える関係のもつ力を知った交流でした。
また、10月には、福島市にある4つの施設を訪問。また、同じく市内の福島こひつじ幼稚園で、バナナのワークショップをしました。
福島こひつじ幼稚園
2回目となるワークショップも、聖セシリア女子短期大学の先生と、卒業生の方にご協力いただきました。到着すると、なんとバナナの鉢植えが。「いつも食べているバナナのことをもっと子どもたちに知ってもらいたい」ということで、園長先生が購入されたそうです。ワークショップは大成功でした。終わった後、一緒に踊ったダンスや歌が頭から離れず口ずさんでいる子どもたちの姿を見ると、とにかく楽しかったんだろうなと思います。また、バナナの話をしているとき、子どもたち以上に「へ~」と驚きの声が先生方からあがっていました。
今回のワークショップには、いわき市にある幼稚園の先生も参加。こちらもバナナを届けている園のひとつで、この取り組みに興味を持って来てくださりました。こうやって、園同士のつながりができることも、嬉しいですね。
向かいにある教育センター(学童)の子どもたちにもバナナは配られています。ここの子どもたちもバナナに興味を持っていたので、その日2度目となるワークショップを、教育センターで実施しました。幼稚園児と比べて理解も早く、質問はバナナを越えてフィリピンに関することも。これからも、いろんなことに興味を持ち、吸収していってほしいです。
あすなろ保育園
この園は、乳児の受け入れもしていますが、今は待機も多いとの話を伺いました。外で走り回っている子どもたちがもっと元気に遊べるように、園庭のゴムチップを増やしたいとおっしゃっていました。他にも、園児のためにしてあげたいことがあるそうですが、あすなろ保育園は市街地調整区域に当たります。同区域は様々な制約があるそうで、工事の対応をしてもらえない箇所があるそうです。
改めて原発事故の話をしたとき、園長先生が「今まで便利すぎたから、もっと不自由しなさいということかしら」とぽつり。食材に関しても、県外産のものがどれだけ安全かわからず、検査されている県内産のものの方が安全なのではないかと悩むそうです。いつも子どもたちのことを考え笑顔で仕事をしている先生ですが、私たちが考えないようなことが日々の悩みになるのだということを改めて気付かされました。
今回が2回目の訪問でしたが、園長先生とはよく連絡をとっているため、お互い昔からの知り合いのように感じています。
東浜保育所
到着したとき、ちょうど子どもたちはお昼寝中だったため、会うことはできませんでしたが、先生と楽しく話をさせてもらいました。福島では保育の先生の数が足りないそうで、日々忙しくされているという印象を受けました。施設の目の前の道、そして近くの川は線量が高く、とにかく散歩ができないとのこと。アスレチックなど、一部の遊具も線量が高いため、子どもたちが触らないようにとロープが引かれていました。それでも、園児が遊べるようにと滑り台の設置工事が入るそうです。
バナナはデザートに入れたり、他にも調理して使ってくれているそうで、生で食べるよりも口に入れるまでに時間がかかっています。実は、先生からの要望で、他の施設よりもお届け回数を減らしています。ただもらうだけではなく、何に使うか考えて使ってくださっていて、今回の会話でそのことがさらに伝わってきました。たくさんの人に大切に食べていただけて嬉しい限りです。
最後に
震災から2年半後に訪問させていただいた各施設。出会った方々の笑顔が印象的でしたが、それでも抱えているものはまだあるということを再認識しました。まだまだ伝えなければいけないことはたくさんあります。
それと同時に、バナナを送る活動が、関わる人びとを結んでいることを強く感じています。このつながりが更に大きくなるよう、これからもバナナ募金にご協力を宜しくお願いいたします。
報告:赤石優衣(あかいし・ゆい/APLA)