カネシゲファーム・ルーラルキャンパス(以下、KF-RC)は、「若者の農民の育成」と「循環型有機農業の普及」のために日々の活動を進めていますが、同時に農場としての自立運営も確立しなくてはいけないという課題があります。そのため、KF-RCのスタッフは日々、会計・マーケティング・野菜や家畜の生産性向上に向けて努めています。そのなかで、今年度最も力を入れていることのひとつである、養鶏の生産性の向上についての話をお届けします。
ネグロス島の農村部では、必ずと言っても良いほど、どの家庭でも鶏を飼っています。しかし、それは“養鶏”ではありません。勝手にその辺の草や虫を食べてもらって、ご飯が余ったら残飯を与えて、卵を産んでくれたらラッキーといったスタンスです。鶏は、お金が必要になったときのための貯蓄やお客さんが来たときに料理として出すためのものなのです。そこに手間やお金をかけようとはあまりしません。
当初は、KF-RCの農場でも同じでした。広い農場内で鶏を平飼いし、余ったご飯や売れない野菜が出たら餌として与える。いま何羽いるのかも、卵をどこに産んでいるかも分からない。お客さんが来る度に料理として出す。そうしていくうちに100羽以上いた鶏が20羽以下になってしまいました。
立派な鶏舎があるにも関わらず、このままではいけないと思い、何度もスタッフたちに「養鶏にもっと力を入れようよ」「鶏をたくさん生産してKF-RCの収入を上げようよ」と提案しました。みんなその場では、「分かった、そうだよね」と言ってくれるものの、なかなか行動に移しません。そりゃそうです。鶏にお金をかける、しっかり管理する、という感覚がないのですから。そこで、みんなの養鶏に対する意識を変える必要があると思うと同時に、こちらから一方的に提案するのではなく、スタッフから自発的に鶏の生産性を上げたいと思ってもらうようにしなくては、と考えるようになりました。みんなが動かないならまず私が動けばいいのだと思い、養鶏担当になりました。もちろん、鶏に対する知識は全くのゼロです。でも問題ありません。知識はスタッフのみんながもっています。「餌は、○○や○○を混ぜてあげると良いんだよ。○○だけだと栄養が足りないからね」「あの鶏は今卵を持ってるよ。だって○○だから」など、質問をすれば期待以上の答えが返ってきます。
毎日質問をしながら世話をしていたら、みんなの意識も少しずつ変わってきました。「ひよこは寒さに弱いから、ひよこ用のケージを作って、夜はライトをつけて暖かくしてあげたらどうかな?」「みんな一緒のところで餌をあげると大きな鶏ばかり餌を食べて、小さな鶏は餌を食べられないから、小さな鶏は分けて飼育しようよ」など、スタッフから提案をしてくるようになりました。そこからは早いのです。みんなで協力して、1日、2日で鶏小屋を作りあげてしまいます。できあがった鶏小屋に嬉しそうに鶏を移し、それから毎日観察しています。鶏に関心を持ってくれたようです。
いまでは、ひよこの生産数も増えてきていて、鶏以外にアヒルの飼育にも力を入れています。私以外のスタッフに養鶏担当になってもらって、徐々に私はフェードアウトしていくつもりです。おそらく養鶏に対する意識は、もう問題ないでしょう。これからは、さらなる生産性の向上、そしてどのように販売して、常に何羽を維持していくなどの計画を立て、実行していけるかが課題です。
今日もスタッフたちは、ああでもないこうでもないと話し合いながら、養鶏はもちろんのこと、養豚や野菜などの更なる生産性の向上に向けて頑張っています。どうぞこれからもKF-RCのみんなの頑張りを見守っていてください。
報告:寺田俊(てらだ・しゅん:APLA現地インターン)