東ティモールの農村部では、三石カマド(大きめの石を三角に並べた上に、鍋を置いて、その下で薪を燃やす)を使っての煮炊きが主流です。標高が1000メートル前後のコーヒー産地では、朝晩はかなり冷え込むので、その三石カマドをみんなで囲んで暖を取る光景もよく見かけます。けれども、燃焼効率が悪いために薪を大量に使わなくてはいけないこと、煙がそのまま屋内に充満するので、炊事をする女性たちや周りで過ごす子どもたちの健康状況への悪影響も否めません。
そうした背景があり、今回、現地NGOのPermatil(パーマティル)の協力の元、改良カマドと呼ばれる粘土をベースにしたカマド作りに挑戦してみることになりました。
材料は、地域の中で調達した粘性の強い赤土、牛糞、おがくず、砂、そして少量の水。よーくかき混ぜてから、こねていきます。講師をつとめてくれたアタイさんとカマウさんによると「ポイントはとにかくしっかりとこねること」だそう。そうすることで、割れにくい粘土になるのです。
そして、Permatilからいつも学ばせてもらうのは、地域の人びとの巻き込み方。広げたビニールシートの上にかき混ぜた材料を広げ、「みんなでダンスだ、テベ(足を踏みならす伝統的な踊り)だ!」と呼びかけるカマウさん。電気が通っていない村なので、カーステレオのボリュームを最大にして曲を流して、盛り上げます。長時間にわたって土をこねる大変な作業も、みんなが大好きな「ダンスパーティー」風にしてしまえば、おとなも子どもも楽しみながら作業に参加できるというわけです。そうしてみんなで踊り続ける(こね続ける)こと、約2時間!カマウさんが水分量と粘り気を何度もチェックして、ようやくOKが出た時には、さすがにちょっと息切れ気味でした。
その後は成型の作業。今回は、台所に固定する改良カマドと持ち運び型のカマドの2種類を作ることにしましたが、どちらもまずは、粘土を団子状に丸めるところからスタートです。
持ち運び型の方は、食用油を薄く塗ったプラスチックのバケツに、空気が入らないように粘土団子を詰めていきます。びっちり詰め終わったところで、ひっくり返して取り出して、焚口(燃料の薪を入れる口)と鍋を置く口、そして側面に空気穴を掘っていきます。
もうひとつは、一人のメンバーのお宅の台所に固定型のものを。こちらはかなり沢山の粘土を必要とします。途中で「粘土が足りない…!」となって、二口のカマドを作る予定を変更して、今回は一口だけにすることにしました。カマドを設置する場所に、先ほどの粘土団子をかまぼこ状に積み上げていきます。空気が入らないように「ていやぁっ!」と気合を入れて、楽しそうに粘土団子を投げつけていました。
高さ、幅ともに十分なサイズになったら、コテや竹のヘラなどを使って、平らにならしていきます。持ち運び型と同様に下から焚口を堀り、メインで使用する鍋の底の大きさにあわせて置き口を掘り、煙を煙突まで流す横穴も掘ります。煙突の土台は、平らな石を積み重ねて、それを粘土で覆いました。
外では同時進行で、煙突づくり。モノが限られている東ティモールでは、ちょうどいいサイズの筒を手に入れるのも一苦労。今回は、亜鉛鉄板(トタン)を筒状に丸めて、針金で固定する方法をとりました。
完成した煙突をカマドと固定、さらに壁にノコギリで穴を開けて(!)、設置が完了です。一週間ほど乾燥させてからでないと使用できないのですが、ひとまずきちんと煙が流れるかのチェックのために、鍋を置いて、小さな火を燃してみました。結果は…外の煙突から煙が出てきたので、大成功!!
実践を通してカマド作りの方法やコツを学んだ後は、全員で輪になって、振り返りのミーティングです。講師のアタイさん、カマウさんが一方的に話をするのではなく、一つひとつ質問を投げかけながら、それにメンバーが答える形で、今回おこなった作業についてのおさらいをしました。最後に「自分の家でも作ってみたい人は?」と問いかけたところ、ほぼ全員が手を挙げるという結果でした。けれども、材料を準備して、粘土をこねて、成型するところまで、一人でおこなうのは大変な仕事です。「だからこそ、一軒ずつに設置する作業を協同で順番におこなっていったらいいね」という話になりました。
とはいえ、この改良カマドがこの村に定着していくかどうかは、まだまだわかりません。使いはじめてみたら、色々勝手が悪い、ということもあるかもしれません。「使い勝手が悪いから、やっぱりいらない」と三石カマドに戻るのも、「どうしたら使い勝手をよくできるかな」と工夫して自分たちにあった形で改良を重ねるのも、どちらも彼/彼女たち自身が決めること。引き続き、様子を見守っていきたいと思います。
報告:野川未央(のがわ・みお/APLA事務局)