都内で総会を終えた後、夜の交流会と翌日のフォーラムのために、フィリピンから来日中のゲストと一緒に電車で成田へ移動。向かう先は、成田空港の「ど真ん中」にある木の根ペンション。周りをフェンスで囲まれ、入り口に見張り小屋が建つその様子には、数日前に成田空港を利用したグレッグとアルフレッド(通称アンボ)もびっくりだったようです。
地元・成田のみなさんが農作業を終えられるのを待つため、まずはフィリピンの2人と参加者のために、「地球的課題の実験村(以下、実験村)」の相川さんから成田・三里塚についてブリーフィングをしていただきました。現在、鉱山開発が進む北部ルソンからやってきているグレッグさんには、成田空港建設の歴史はどのように映ったのでしょうか。
交流会は地産地消のお料理で
当日の交流会には、プロのイタリアン・シェフ石井さん(来年には、成田でご自分のお店をオープン予定とのこと。楽しみです♪)に無農薬のお野菜をつかったとびっきりのお料理を用意していただきました。この野菜、成田で新規就農した方たちのグループである「東峰べじたぶるん」からゆずっていただいた新鮮なものばかり。とにかくどれも豊かな味わいで、おいしいお酒とともに参加したみなさんのお腹のなかにどんどん消えていきました。北部ルソンで柑橘類を栽培しているグレッグは、メニューのなかにある「カブと帆立とオレンジのマリネ」を食べて、「オレンジをデザートではなくておかずにつかうのはとても珍しい!向こうで広めたいので、ぜひレシピを教えてほしい!!」と興奮した様子で、最後には石井さんからレシピを聞くことに成功していました。思わぬ発見・学びがあるのも、こうした交流のよさだと再確認です。
まだ明るいうちからはじめた交流会は、アンボとグレッグからスライドをつかって地域の紹介、それにつづいて始まった参加者約30人の熱のこもった自己紹介、そして思い思いの歓談…と、にぎわいが途絶えることなく、あっという間に夜は更けていきました。
三理塚の農を巡るツアー
2日目の午前中は朝からあいにくの雨模様でしたが、貸切バスでの移動になんだか遠足気分です。まずは、成田空港B滑走路のすぐ近くで営業している三里塚物産へ。らっきょう工場とも呼ばれている三里塚物産の平野さんは、「畑に捨てられているらっきょうをどうにかできないものか」と、この地域に伝わる漬け方で加工品にして販売していくことを思いついたとのこと。その間にも、飛行機が離着陸するものすごい騒音で何も聞こえない状況が何度もあるのです。驚いて顔を見合わせるわたしたちに、風向きによってさらに騒音が強まると平野さん。「今日は残念だったね」と冗談まじりに話されていましたが、付近に住む方々、ここで仕事をする三里塚物産の方々のことを考えると、笑っていいものか考えてしまいます。空港建設の歴史やこの地域についても、資料まで用意して説明してくださり、スタートから中身の濃い現場訪問になりました。最後には、特産品のらっきょうをおみやげにいただき、次の訪問場所である東峰べじたぶるんのメンバー秋間さんの畑に。新規就農といっても、秋間さんはすでに8年のベテラン。多品目少量栽培をしている大きな畑を見せてもらって、ネグロスで農業学校を始動させるアンボさんが特に強い関心を示していたのが印象的でした。他の参加者も昨日の夜にいただいた野菜がつくられている畑を訪問することができて、大満足だったのではないでしょうか。スナップえんどうをその場でかじらせてもらった人からは、驚くほどの甘さに歓声があがっていました。
続いて、東峰べじたぶるんも利用している出荷場へ案内していただきました。ここから東峰べじたぶるんの会員さんに野菜を直接送っているということで、出荷場にはコンテナやダンボールがずらりと並んでいました(わたしも月に一度、おいしい野菜を送っていただいています)。農を基軸にした地域づくりを考えるときに、「流通」はひとつの重要なキーワード。顔の見える関係(=流通)を実践してきている三里塚のみなさんから、APLAが学ぶことは多いはずです。
最後に訪問したのは、午後のフォーラムのスピーカーをつとめてくださる阿南さんの畑です。独立して2年目で、すでに3.5反(約35a)を借りているとのこと。自分が育てている野菜について熱心に説明してくださる阿南さんの姿をみて、フォーラムのテーマである「農を軸にした地域づくり、若者が主役になろう」にぴったりな方だなぁとうれしくなりました。
ツアー&フォーラムを終えて
そうしてツアーはあっという間に終了、木の根ペンションに戻って昼食をとったあと、フォーラム開始となりました。フォーラムの内容の詳細は、8月発行予定の『ハリーナ』vol.5に掲載いたします。どうぞご期待ください。
今回、三里塚という農の現場・空港建設という国家プロジェクトの現場で、交流会からフォーラムまでをおこなうことができたことを関係者各位に心より感謝いたします。フィリピンの2人も、フォーラムでの発言の一言めは「三里塚での体験を必ず自分たちの仲間に伝えたい」ということでした。一方、三里塚のみなさんからは「今度はぜひ自分たちがフィリピンを訪問したい」との声があがっています。今、こうして振り返ってみると、今回のフォーラムは、それそのものは小さいけれど、確かなつながりが生まれることで、APLAがめざす「人びとが創るもうひとつのアジア」が形になっていくのではないか、そんな希望をもてる2日間でした。
報告:野川未央(のがわ・みお)