2022年12月23日、オーストラリア付近の低気圧の影響を受け、インドネシアのスラウェシ島南部に大雨と強い風がもたらされ、エコシュリンプ産地であるピンラン県各地で高潮による洪水被害が発生しました。養殖池は、海に沿って広がっているため、大雨による水位の上昇と海からの大波によって、エビや魚の多くが流されてしまいました。一方で、この地域の多くの家屋は伝統的な高床式のため、幸いにも住居には大きな被害は出ませんでした。
オルター・トレード・インドネシア社(ATINA)からの報告によると、同県内にある936のエコシュリンプの養殖池のうち457の池(総面積914.34ha/生産者数399人)が被害にあったとのことです。ATINAジェネラルマネージャーのハリーさんが2023年1月に現地を訪問し、被災地の状況の報告や被害にあった生産者の声を届けてくれたので、一部をご紹介します。ランリサン地区の生産者タムリン氏
所有する養殖池は海岸のすぐそばに位置しています。稚エビを昨年11 月に放流したばかりで、今月(2023 年1 月)に収獲をする予定でした。高潮により打ち寄せた波で海岸の砂が養殖池に流れ込み、養殖池が完全に埋まり消失してしまいました。生計手段であったエビと魚の養殖ができなくなりました。
また、仲間10 人と一緒に運営していた稚エビの養殖場も同様に砂に覆われてなくなってしまいました。稚エビ養殖場を共同で運営しているアグス氏は、10×20mの稚エビの養殖場を6 つ持っていますが、それが唯一の収入源でした。一つの養殖池で300,000〜450,000 匹の稚エビが収獲時期を迎 えていましたが、今回浸水被害にあい、すべて流されてしまいました。
サロポッコエのエビ生産者のナスルディン氏
彼は7 haの養殖池を保有しており、12 月に収獲を予定していました。天気予報は確認していましたが、毎年高潮は起こっており、これまでも大きな被害を受けたことがなかったため、今回も大したことはないだろうと特段対策は打っていませんでした。しかし、今回 は想定をはるかに上回る被害が発生し、彼が経験したなかでも最悪な状況となりました。
浸水被害前は、一回の収獲で毎日10 ㎏程のエビが獲れていましたが、今は0.5 ㎏もしくはそれ 以下の時もあります。また、今回の浸水によりエビの天敵になる魚が池に入り込み、稚エビの放流が出来ないため、一旦池の水を抜いて池干しをする必要性が出ています。ですが、池や河口に埋まった砂のために、池の排水、取水が出来ない状況となっています。 地域のエビ生産者は共同での砂の除去作業は行っていません。皆、自治体が重機の支援をしてくれるのを待っている状況で、しかし私(ハリー)が訪問した時点で自治体からの明確な支援計画は出ていませんでした。生産者が自治体から言われたことは、浸水状況を写真に撮って地元の水産局に送ることだけだったとのことです。
ナスルディン氏は、他の収入源として米作をおこなっており、他の生産者とは違い、収入が 断たれることがなかったのが幸いでした。
このように、まずは被害を受けた養殖池の修繕(土手の修繕、養殖池の堆砂のかき出し、養殖池につながる河口の堆砂のかき出し)が必要不可欠です。特に、河口の堆砂の問題が特に深刻です。上流からの水が堰き止められてしまっているために、今後の大雨などでさらなる被害につながる懸念もあるなか行政の動きがまったく見られないため、生産者・住民たちの不安が募っているようです。そうした状況を受け、ATJと相談をした結果、河口に堆積した砂の掘削費用として、緊急災害支援準備金から100万円の送金を完了しました。
なお、被害を受けた養殖池のうち、修繕作業を先に進める必要があるのが約4割、残り6割については、稚エビ・稚魚を放流して養殖を再開することが可能な状況だそうです。前述の通り、被害が広大な面積に及んでいるため、支援を必要としている生産者の数も多く、稚エビ・稚魚の調達に多額の資金が必要となっています。皆さまからのご支援・ご協力をお待ちしています。
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