カネシゲファーム・ルーラルキャンパス(KF-RC)では、2009年のスタート以来、農村の若者が有畜複合循環型農業を学ぶことのできる研修を継続しており、毎期3〜5人の若者たちが半年〜10か月ほど農場で寝食を共にしながら実践的な学びを重ねてきました。今年度の後半からは10期生の受け入れをする準備を進めています。
この研修制度以外に、地域の小学校の子どもたちにも農業や動物に触れる機会を提供してきたKF-RCですが、この3月には地元ラカステリアーナの高校で家畜について学んでいる13人の高校生(男子10人、女子3人)の現場研修を受け入れました。
72時間(9日間)にわたる研修は、オリエンテーションからスタートし、豚の餌の調合作業、子豚の駆虫や投薬の体験、去勢や分娩への立ち合い、さらには豚肉の解体作業の見学まで、教室の中では決して学ぶことのできない盛りだくさんの内容でした。自らも第1期研修生として農業を学び、現在では事務局長として農場を切り盛りするエムエムさんと養豚担当のジョネルさん、農場長のカルロスさんをはじめとして、KF-RCのスタッフたちの姿は高校生たちの目にどのように映ったか、直接話を聞くことは叶いませんでしたが、地域内の先輩農家・養豚家と一緒に働いた72時間、そこから学んだこと・感じたことは、彼/彼女たちが将来の道を選ぶことに多かれ少なかれ影響を与えると確信しています。
なお、研修終了後の4月から、ネグロス島では豚コレラの被害が広がり(新聞報道によれば、2023年5月中旬までに2400頭が死亡)、これまでフィリピンの他州では報告されているもののネグロスにはまだ入ってきていないと言われているアフリカ豚熱の脅威も高まってきており、養豚を農場経営の中心としているKF-RCも危機感を持っています。先日はオンラインで理事会も開催し、防疫対策の強化も確認しました。当面は、外部から農場内への立ち入りを制限するため、今回ご報告したような研修などの受け入れもできませんが、まずは豚たちが健康に生き延びられるように注力し、状況の好転を待つばかりです。
新型コロナウイルス感染症パンデミックによる移動制限、台風オデットの甚大な被害を乗り越えたところで、今後は豚を取り巻く厳しい状況に直面しているKF-RCですが、スタッフと理事全員で知恵を出し合って対応することで、今回の危機もきっと乗り越えていけるはずです。引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします。
報告:野川未央(のがわ・みお/APLA事務局)