■ヨルダン川西岸地区の概況
ヨルダン川西岸の政治・治安情勢は、2023年10月7日以前にすでに緊迫しており、その後エスカレートし続けている。今回のガザへの攻撃が始まる前の20ヶ月間に、イスラエルの極右新政権が誕生し、パレスチナ人の権利と自由に対する抑圧と収奪が強まり、その間にヨルダン川西岸地区で470人以上、ガザ地区で89人以上のパレスチナ人がイスラエル軍によって殺害された。
過去2年間、イスラエル占領軍は、何百ものパレスチナ人家屋の破壊を命じ、暴力的なイスラエル人入植者による攻撃を支援し続け、パレスチナ人に物的損害や負傷をもたらした。パレスチナの土地におけるイスラエル入植地の拡大は、ここ数年で加速している。
このようなイスラエルの継続的な抑圧と、75年にわたる占領下でのパレスチナ人の闘いは、暴力の輪の爆発を引き起こしてしまった。最大の「野外刑務所」であるガザ地区における大規模な人道的大惨事をもたらしているイスラエル軍の空爆により、5,500人の子どもを含む13,000人以上のパレスチナ人が殺害されている。
■10月7日以降の状況
イスラエルによるガザ侵攻が始まって以来、ヨルダン川西岸地区では212人以上のパレスチナ人がイスラエル軍によって殺害された。また、ヨルダン川西岸の各都市は、軍事検問所によって互いに隔離され、異なる地域間の移動が制限されている。
オリーブの収穫シーズンと重なり、一部のオリーブ農家は、イスラエル入植地近くの農地に行くことが難しくなった。10月7日以降、動員された暴力的な入植者たちがオリーブ農家の暮らしを脅かしている。ナブルス近郊のアル・サウィヤ村でオリーブを収穫していた農民のBilal Salehさんがイスラエル人入植者によって殺害されたほか、多くの農民が定期的に襲撃され、一部地域では、イスラエル人入植者によってオリーブの実が盗まれている。また、イスラエル側は、いくつかの村でアパルトヘイト分離壁の向こうの農地に行く許可を農民に与えなかったため、通常の収穫量の20%から40%のオリーブしか収穫できていない村も複数ある。
■パレスチナのオリーブ産業
オリーブの木は、900㎢以上のパレスチナの土地に広がっており、良い年には約33,000トン、悪い年には約7,000トンから10,000トンのオリーブオイルが生産されている。パレスチナには約1,300万本のオリーブの木があるが、残念ながらそのうち250万本は実をつけていない。
1967年以来、イスラエル占領軍は、80万本以上のオリーブの木を根こそぎ焼き払った。植民地化・分離壁抵抗委員会の報告書によると、入植地の近くにあり、アパルトヘイト分離壁によって隔離された土地の面積は、パレスチナでオリーブの木が植えられている土地の総面積の7%(約40㎢)と推定され、その所有者は、イスラエル側からの許可がない限り、その土地に立ち入ることができない。これらの土地の所有者は、自分たちの土地を取り戻すこともオリーブを収穫することもできず、オリーブの実が盗まれたりオリーブの木が焼き払われたりされる被害を受けている。こうしたイスラエルによる妨害により、年間約1,500トンのオリーブオイル、約1,050万米ドル(約15億7,500万円)相当の損失が出ている。
10月7日から今日に至るまで、イスラエル占領軍は、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人農民がアパルトヘイト分離壁の向こう側やイスラエル人入植地周辺の土地でオリーブを収穫することを妨げている。その中には、暴行や銃撃も含まれており、オリーブを収穫している最中に農地で殉教したり負傷したりした農民も多数いる。
■We Are With You キャンペーン
パレスチナ農業復興委員会(PARC)は現在、ヨルダン川西岸地区とガザ地区の様々な場所で毎年PARCが自主的に行っている「We Are With Youキャンペーン」を進めている。このキャンペーンは過去15年間続けられており、主な目的は、イスラエルの占領と入植者の侵害に対抗して、オリーブの収穫期に農村部のオリーブ摘み取りでパレスチナの農民を支援することである。残念ながら、今年は戦争が続いているため、外国人ボランティアはこのキャンペーンに参加することができなかった。
上記のキャンペーンに加え、最近では、ヨルダン川西岸周辺の村の農家にはしごを配布し、彼らがオリーブの実を摘むのを手伝う活動もおこなっている。
注:アルリーフ社は、現地の農民支援団体のパレスチナ農業復興委員会(PARC)が設立したフェアトレード事業会社であり、APLA SHOPで販売しているオリーブオイルを日本に届けてくれています。