APLAが長年活動を続けているエルメラ県の3つの地域、レキサラ、リアモリ、メルトゥトで在来の種子に関するアンケートをもとにした聞き取り調査を行いました。アンケート項目は、APLA現地スタッフのパウラさんと共に作成し、活動地域での「現在」と「過去」の農、特に種子に関する実践を探りつつ、各地域で在来の種子の保全を呼びかけました。
首都のディリを出発し、まず向かったのは、3地域のうちで最も遠くに位置するレキサラ集落。小学校のすぐ隣に住むアントニオ先生がアンケートに答えてくれた後、集落での調査実施を助けてくれました。アンケートには「現在、自分の畑で植えている野菜や果物は?」「その種や苗はどこで手に入れましたか?」「自分で種採りをしているものはありますか?」といった現在進行形の実践についての質問のほか、過去にこの地域で食べられていたものについてや、先祖から続く、もしくは途切れてしまった種子保全の知恵についてなど、複雑な質問もあったので、テトゥン語に加え、現地のマンバエ語やインドネシア語も話せて集落で信頼されているアントニオ先生の助けはとてもありがたかったです。
一夜明けて、続いてはリアモリ集落です。リアモリには頼もしいAPLAのファシリテーターであるマルコスさんとマルセロさんがいて、彼らが調査を手伝ってくれました。以前、独自でいくつかの種を保管していた女性(詳細はこちら)のお宅でのアンケート中には、わいわいと何人かが集まり種子バンクの話になりました。コミュニティの人たちが独自に集めている種子をディリでも保管するため、少し分けてもらい「これはAPLAが自分のものにするわけではなく、私たちみんなの種です。大事にとって保管すれば、洪水や土砂崩れなど自然災害から種を守り子孫の時代まで残せます」と説明すると、「そうだ、それはいいアイデアだ」「少しずつ保管しておけば、誰かが困った時そこから使える」といった声があがったり、近年の不安定な気候についても話が広がったり、改めて種子バンクの重要性を考える機会になりました。
最後はメルトゥト集落です。ここにもAPLAのファシリテーターのアグスさんがいるのですが、今回は残念ながら県外にいて会うことができませんでした。私にとっては初対面、APLA現地スタッフのパウラさんにとっては久々となるコーヒー生産者グループGATAMIRのメンバーと近況を話し合う機会となりました。
3カ所それぞれ、過去には食べていたけれど今は加工や下処理プロセスが面倒で食べ(られ)なくなった食べものについての話がありました。在来の種子の保全のためにコミュニティの人たちと共に活動しながら、このような忘れられつつある食べものについても考えていきたいところです。
こうした重要性を持つ在来の種子の保全について、楽しく視覚的にメッセージを伝えられないか?ということで、演劇の準備を進めています。話の発端は、エルメラ県を拠点に活動する有機農業団体TILOFE(Timor-Leste Organic Fertiliser)でのおしゃべり。代表のゼッキーさんからエルメラの若者が市場で演劇をやって大盛り上がりだった、という話があり、「市場で演劇!農業従事者が一番集まる場所だから、市場で在来の種子の保全を訴える演劇をやればおもしろいんじゃないか」と話が進み、今年度の活動計画に盛り込みました。
在来の種子調査の結果も参考に、TILOFEのメンバーや演劇グループのメンバーとシナリオを制作し、7月の上演に向けて調整および練習中です。
報告:松村多悠子(まつむら・たゆこ/APLA事務局)