バランゴンバナナ民衆交易が始まって23年になります。ネグロス西州ドン・サルバドール・ベネディクト(DSB)のパンダノン村から、バランゴンバナナ生産者のマカオさんが、ネグロスのオルター・トレード社(ATC)スタッフのパオロさんといっしょに来日しました。9月18~29日まで日本に滞在し、関東、関西、宮城県8ヵ所の生協で、300人を超える消費者と直接出会いました。
海を越えた彼方からやってくるバランゴンバナナ、されど身近に感じられるバランゴンバナナ。
交流会では、パオロさんがマカオさんのところに何度も通って制作した動画やスライド写真を使い、マカオさんの暮らしやバナナの生産・出荷状況が報告されました。バランゴンバナナ出荷日の動画は、大変な山間から水牛の引くソリにバナナを乗せて運搬する様子が移っています。撮影日には雨まで降ってしまい、本当に大変な出荷の様子を知ることができる映像に、バランゴンバナナが、海を越えた彼方からやってくることが実感できたという感想をたくさんいただきました。
マカオさんは、16年前からバランゴンバナナを日本に出荷しています。「私は、ネグロスの一人の農民です。バランゴンバナナの出荷が始まったおかげで、生活のために仕方なく携わっていた森林伐採に繋がる仕事を辞めて専業農民になれました。今では、バランゴンバナナの栽培や有機農業への取り組み、森林保護活動などを通じて、環境を守る活動のリーダーを務めるようになりました。夫婦で農業に取り組み、7人の子どもたち皆に、食べものを生産することの大切さを教えています。子どもたちにはそれぞれの夢を実現してもらいたいと思っていますが、2人が農業を継いでくれそうです。食べてくれる消費者との顔と顔の見える信頼関係があれば、バランゴンバナナ生産の後継者に問題はないと思います」とマカオさん。
交流会では、後継者についての質問が多く出されましたが、「食べる側の後継者はいかがですか?」という生産者側からの質問も。こうしたマカオさんとの交流会や、2011年3月11日の東日本大震災の被災者に届けられた生産者からの支援バナナの話から「バランゴンバナナが身近になった」、「生産者とのつながりを感じた」という感想をたくさんいただきました。
有機肥料は土のエサだって!?
消費者との交流会の合間に、日本で有機農業を営んでいる生産者を訪ねました。有機農法で白菜をつくったところムシにやられて「有機での白菜づくりは無理」と諦めかけていたマカオさん。しかし、三重県伊賀市の有機農家の方々に「それ、日本でも同じムシがいるよ! 自分は掃除機をかけてみたけどイマイチで、朝晩一匹ずつつまんでいるよ!」という話を聞き、「技術の進んでいる日本でも有機農業は手間がかかるんだ」と実感したといいます。また「有機肥料や堆肥は作物を育てるものじゃないんだよ。それは土や土の中の循環をつくるための栄養分なんだ」という考え方はマカオさんには「斬新的」で、小雨降る畑で熱心に耳を傾けていました。ネグロスの人びとはあまり野菜を食べませんが、畑で食べたもぎたてのオクラや野菜づくしの昼食に、マカオさんとパオロさんのお腹は大満足でした。
幕田恵美子(まくた・えみこ/ATJ)