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2013年7月+8月No.219 エコシュリンプの新工場が完成しました

自然の生態系が保たれた養殖池でプランクトンや藻を食べて育つ「エコシュリンプ」は、インドネシアのシドアルジョ県にあるオルター・トレード・インドネシア社(ATINA)で、冷凍されて日本に輸出されています。ATINAでは2013年3月24日に新工場の落成式が行われ、新たなスタートを切りました。今回は、新工場稼働までの流れを、ATINAで働く人びとの様子とともにお伝えします。

新工場に向けて準備!

食堂で打ち合わせ中のスタッフ

1980年代から急速に拡大した「集約型養殖」のエビに対するオルタナティブとして始まったエコシュリンプの取り組みも、早21年。最初は現地工場との取引からスタートしましたが、徐々に産地との関係性を構築し、原料買い入れから冷凍加工、輸出までを一貫して担うオルター・トレード・インドネシア社(ATINA)が設立されるに至りました。これまではリース工場での製造でしたが、より地域に根付き、生産者に寄り添って活動すべく、従来と同じ東ジャワ州シドアルジョ県に、新しい工場の建設が始まりました。

工場内に皆集まり、ハリーさん(帽子をかぶっている人)が話をしています

3月6日、約2年間の歳月をかけた新工場の建設がほぼ終わり、稼働準備がはじまりました。これまで、仮電源による薄暗い工場の中で機械の設置工事や機材の搬入などが行われていましたが、配電盤の前で無数のケーブルの接続作業が終わると、工場の動脈とも言える電気がようやく通り、工場内に照明が灯りました。集合したスタッフに、現地責任者のハリーさんから激励の言葉が伝えられ、工場の稼働準備も本格的に始まりました。

新しく導入されるBMプラント

BMWプラント

新工場のもう一つの目玉は、BMW技術(注)を用いた排水処理と生物活性水プラントの導入です。インドネシア第2の都市であるスラバヤと隣接するシドアルジョ、モジョクルト、グレシックの3県では、近年人口の増加と都市化が急速に進んでいます。廃棄物や生活排水、工場排水による河川の汚染も深刻になっており、エコシュリンプの育つ池にも今度の影響が懸念されます。この様な背景のなかATINAでは、環境保全型の工場をめざし、BMW技術の導入が決まりました。BMW技術協会の協力のもと、ATINAの技術スタッフが全工程に関わって建設された新しいBMWプラントのタンクでは、汚水の分解を担う微生物も育ち始めています。

落成式

3月24日、落成式の日、工場の門から建物へつづく道は、続々と寄せられたお祝いの花で飾られていました。会場には、池主のイルルさん、来賓の方がた、ATINAのスタッフをはじめ、多くの人びとが集いました。

プロのダンサーによるエビダンス

ATINAの堀田社長の挨拶に始まり、来賓の挨拶とイスラームのお祈りが行われました。地元シドアルジョの伝統的芸能のエビダンスも披露され、エビを頭に乗せてリズミカルに踊る姿に会場は和みました。ATINAのスタッフたちは、前日の深夜まですっと休みなしで工場の稼働準備を続けてきたせいか、皆眠たそう。それでも、笑顔であふれていました。20年の節目を迎えたエコシュリンプの民衆交易、次の20年はエコシュリンプを通じてどんな人びとが繋がっていくのでしょうか。

義村浩司(よしむら・ひろし/ATJ)

注:バクテリア・ミネラル・ウォーターの略で、バクテリアとミネラルの働きをうまく利用し、土と水が生成される生態系のシステムを人工的に再現する技術のこと。

集約型のエビに関して問題提起をされ、伝統的な養殖方法で育てられたエコシュリンプの民衆交易が始まるきっかけをつくられた、村井吉敬先生(上智大学名誉教授/APLA共同代表)が2013年3月23日未明に他界されました。落成式の会場に集った人びとは、エコシュリンプの生みの親でもある村井先生を偲び、ご冥福を祈りました。