ラオスのコーヒー生産者との出会い
2003年12月、まるでクリスマスプレゼントのように、オルター・トレード・ジャパン(ATJ)に一通のメールとコーヒーのサンプルが届きました。ATJが東ティモールで続けてきたコーヒーの取り組みを知った国際NGOのオックスファム・オーストラリア(以下、オックスファム)からの、生活向上のために支援プロジェクトを展開しているラオスのコーヒー生産者からコーヒーを買わないかという提案でした。
東ティモールでの取り組みを経て、さらにアジアでコーヒー事業を発展させていきたいと考えていた私たちは、さっそくラオスで調査を実施。オックスファムが生産者を組織してコーヒーの品質改善やマーケティング指導などを進めていたラオス南部ボラベン高原で、プロジェクトに熱心に参加していたカトゥアット村など5つの村のコーヒー生産者たちと出会いました。こうしてATJは、アジアでは希少なアラビカ種ティピカを豊かな森の中で丁寧に栽培しているラオスの小規模生産者からコーヒーを買うことになったのです。
小規模生産者が運営する生産者協同組合との出会い
ラオスには、ラオス政府と旧宗主国フランスが支援する大きなコーヒー生産者組合がありますが、買い取り価格が決定できなかったり、支払いが大幅に遅れたり、組合として機能していません。一方で、仲買人による買い付けは、毎年必ずあるとも限らないうえ、価格が国際相場に左右され、生産者の収入は不安定でした。また、コーヒーは収穫が年に一度だけのため収入も年に一度であり、天候などに収量が左右されることも重なって、生産者が弱い立場に置かれる状態が続いていました。
そうしたなかで、カトゥアット村などとの関係性構築を経て、ATJは2009年にラオスの小規模コーヒー生産者が運営しているジャイ・コーヒー生産者協同組合(JCFC)と出会いました。コーヒー産地として知名度の低いラオス。フェアトレード認証や有機認証といった“お墨付き”があるわけでもないJCFCには、当時は買い手もまったくなく、組合としてほとんど機能していませんでしたが、膝を突き合わせた話し合いを重ねて、組合の再建に協力することになりました。
まずは、買い取り価格の決定、その後、コーヒー価格の50%前払いや組合運営プレミアムの支払いを実施することを決定し、JCFCに加盟している村の状況を確認しながら、品質向上のために必要な水洗式加工設備や倉庫の建設に対して資金を提供しました。それまでJCFCは、地主に対して非常に高い倉庫の家賃を払い続ける必要がありましたが、自分たちの倉庫を持つことでそうした負担から解消されると同時に、組合としての拠点を持つことができたわけです。そうしたことが組合の再建の第一歩につながったのではないでしょうか。
その後は、JCFC幹部とともに組合に加盟している村々を訪問し、自分たちの取り組みの内容を組合員に説明して理解を深めてもらい、反対に組合員の要望を聞き取る作業も続けました。その要望を受けて実施したことの一つに、ティピカの苗木購入用資金の融資があります。収量増加や品質向上、環境保全を目的として新しいコーヒーの木を植えるという取り組みですが、すでに融資金の返済もはじまっています。
広がりをみせるJCFCの活動
JCFCと出会って以降、ATJは毎年ティピカを購入しています。日本への継続的な販売や前述の取り組みが組合員や郡政府にも認められるようになり、JCFCに加盟する村の増加やラオスコーヒー協会への加盟、新たな買い手からの引き合いなど、JCFCを取り巻く環境は広がりをみせています。また、コーヒーの評判も上がり、ラオス最大のコーヒー会社であるダオフアンもJCFCからコーヒーを買い付けるようになりました。JCFCが新たな買い手と交渉する際には、ATJとの取引条件である前払いや組合運営プレミアムの支払いなどを説明し、これらを守ることを求めているようですが、政府の支援もなく生産者自身が運営しているJCFCがそうした交渉力を持つようになったことは、JCFCが組織として着実に力をつけてきていることの表れです。
JCFCの幹部であるウアンさんやカンプウさん、ノームさんは「日本の消費者は高品質のコーヒーを求めるため、要求に応える難しさはあるが、よりよいコーヒーを販売することでラオスコーヒーの知名度を上げていきたい。そしてJCFCとATJとで長期的にいい関係を築いていきたい」と話しています。
私たちも、日本でラオスコーヒーをより多くの方に届けることで、彼らの取り組みを長期的に応援していきたいと考えています。自然豊かな森の中で丁寧に栽培されたラオスのアラビカ種ティピカは、豊かな香りとやさしい甘みが特長です。ぜひお試しください(商品はこちらでご購入可能です)。
酒井綾(さかい・あや/ATJ)