愛を伝えるチョコレート!?
毎年2月14日のバレンタインデーにあわせて、街中にチョコレートがあふれかえる様子は、もはや風物詩といっても過言ではないように思います。チョコレートに愛の気持ちを乗せて、という「本命チョコ」のみならず、「義理チョコ」や「友チョコ」など、日頃の感謝を伝えるためにチョコレートを渡すことがすっかり定着したようです。コンビニやスーパーで100円で買えるものから、百貨店などで1粒数百円で販売されている高級チョコまで、一口にチョコレートといっても幅広い種類がありますが、すべてに共通しているのが、その原材料であるカカオ。カカオの栽培から加工まで、長いプロセスがあり、世界中の様々な場所の人びとの仕事や暮らしに関わっています。そして、カカオの生産国では、児童労働や環境破壊の問題などが存在しています。
カカオ農園における児童労働
輸出用の換金作物として、効率を重視したプランテーションでの単一作物の栽培は、本来その地域に存在していた豊かな生態系や環境の破壊を引き起こしています。カカオも例外ではありません。また、生産者(農園労働者)は、換金作物だけを栽培しているために、不作など何らかの問題が発生した時には、現金収入ばかりか、自分たちの食べものすら手に入れることができなくなってしまうのです。
甘いチョコレートの裏側には、苦い歴史もあります。世界史を勉強すると必ず出てくる「三角貿易」という言葉。ヨーロッパの植民地支配者や商人は、様々な商品を積んだ船で西アフリカをめざし、そこで荷物を下ろして、代わりに現地で調達した奴隷を船に乗せてアメリカ大陸へと向かい、砂糖キビ、コーヒー、カカオ、綿花などのプランテーションの労働力にしました。そして、奴隷を降ろして空っぽになった船にそれらの産物が積み込まれて、またヨーロッパへと運ばれ、大きな利益を生み出すという仕組みです。こうした奴隷貿易が何の疑いもなく続けられた19世紀後半までの間に、少なくとも1000万人~1500万人のアフリカの人びとが犠牲になったと言われています。
奴隷制が廃止されて以降も、強制労働は形を変えて残っています。そのひとつが「児童労働」。カカオを育てて収穫するためには、たくさんの労働力が必要ですが、人件費を安く抑えるため、多くの子どもたちが働かされているという現状があります。刃渡りの大きなナタの使用や過重な荷物の運搬などによる怪我・身体への負担はもちろん、基礎教育も受けられずに読み書きすらできないなど、成長期の子どもたちが受ける悪影響は測り知れません。現在、世界のカカオ生産量の約7割をコートジボワール、ガーナ、ナイジェリアといった西アフリカの国々が占めていますが、世界熱帯農業研究所の報告(2008年)によると、西アフリカのカカオ農園に限っても、約28万人の子どもが児童労働に従事させられているといいます。
愛のチョコレート宣言
児童労働や貧困の問題、産地の森林の減少や生物多様性の危機など、愛を届けるはずのチョコレートに愛が足りない、そう思いませんか?カカオの生産にまつわる様々な問題を解決するひとつの方法として、フェアトレードやオーガニックなどの「人と環境にやさしいチョコレート=愛のあるチョコレート」を選ぶことがあります。APLA/ATJは、その「愛のチョコレート」の認知を高め、積極的に選んでくれる消費者を増やしたいという想いのもと、生産者や環境に配慮して作られたチョコレートの輸入・販売・普及に取り組む企業・団体が立ち上げた「チョコレート・アライアンス」というネットワークに参加しています。
チョコレート(カカオ)を作る人も、食べる人も、みんなが笑顔になれる「愛のチョコレート」を一緒に増やしていく仲間にぜひ加わってください!
野川未央(のがわ・みお/APLA)
愛のチョコレート宣言1.つくる人の暮らしを支える わたしたちは、公正な対価を支払い、顔のみえる継続的な取引関係を築くことで、カカオ豆や砂糖などの原材料やチョコレートをつくる人びとの暮らしやコミュニティを支えます。2.自然にやさしい わたしたちは、カカオなどの原材料の栽培において、貴重な原生林や水源を壊したり、有害な農薬などが大地のゆたかさを損なうことのないよう、地域の生態系を守りながらの生産を応援します。 3.作る人にも食べる人にも安心 4.子どもを大切にする 5.未来につながる |