「生態系と運命を共にするエコシュリンプ」というタイトルで、手わたしバナナくらぶニュース193号では、エコシュリンプを紹介しました。自然の恩恵を 受けながら続いてきた養殖方法をもとに生産されているエビ、それがエコシュリンプです。産地のひとつであるシドアルジョは、インドネシア第2の都市スラバ ヤに隣接するため、住宅地や工業用地として開発が進み、地域の環境や、川の上流の状態も変化してきています。こうした状況の中、エコシュリンプの生産者た ちは、池の生態系を回復する試みの一環として、地域の住民の環境意識を高めること、またその実践を広めるために、石けん運動が始まっています。
石けん作りを始めました
まず、エコシュリンプの加工工場であるオルター・トレード・インドネシア社(ATINA)では、工場で使う洗剤類を全て石けんにするため、自分たちで石けんを作りはじめました。工場内にはランドリーもあり、工場労働者が着る制服もそこで石けんを使って洗濯されます。
石けん製造の次のステップとして、工場内使用以外にも、地域住民に商品として販売するために、ATINAではさまざまな石けんの種類を実験的に作ってい ます。インドネシアでは、洗濯洗剤や台所用洗剤、シャンプーなどほぼ全てにおいて合成洗剤が使われています。中でも人びとに好まれているのは、いい香り (強い匂い)がする合成洗剤です。テレビコマーシャルでは「この洗剤を使うときれいになって、いい香りがする♪」という宣伝が日々流れているということ。 知らず知らずのうちに、その商品を買いたくなってしまいますよね。そんな中、石けんを人びとに使ってもらうためには、香りつきの石けんを作ることが課題で あり、天然のハーブや花の香りを使って、様々な石けんをつくっています。
なぜ石けんなの?
インドネシアにて合成洗剤の利点、つまり洗濯物が白くなる、髪がさらさらになる……などの情報は大量に流れる一方で、その危険性はほとんど語られていませ ん。なぜ、石けんを使うのかを地域住民の皆さんと一緒に考えてもらうため、APLAとATINAで協力して、2010年3月には石けんセミナーをおこない ました。長年石けん運動に関わり、日々石けんを使っている人の代表として、日本からAPLA理事の廣瀬康代さんと、生協活動との最初の関わりが石けん運動 だったという大嶋朝香さんと一緒に、エビ養殖池にある村や地域の中学校に出向き、健康や自然環境への影響を分かりやすく説明しました。中学生からは、「な ぜそれほど危険な合成洗剤が普通に売られているのか?」などというするどい質問も。「インドネシアの合成洗剤にはどんなものが含まれているのか調べてみた ら、洗剤の包装材には成分表示が書かれていない!まずは、そこを知ることが消費者にとっては大切」と廣瀬さん。
石けんを使いはじめた女性たち
ATINAでつくられた石けんを、今地域で広めているのが、ATINAの製造部長のスナルトさんとお連れ合いのイダさんです。イダさんは、自分でも石け んを使ってみて、肌が白くきれいになったことを実感し、子どもにも使わせてみたら、以前は肌荒れが酷かった末っ子の皮膚がきれいになったことで、そのよさ を確信したとのこと。それを近所のおばさまたちに伝えて広めています。イダさんの肌がとてもきれいなこともあってか、少しづつ石けんを使ってくれる人が増 えているとのこと。
2010年10月には、グリーンコープの組合員さんがスナルトさん宅を訪れ、ご近所のおばさまたちと一緒に石けんセミナーを開催。日々石けんを使っている 組合員さんから、実際に石けんを使って洗いきれいになった油まみれの換気扇などを写真で見せてもらいました。また、インドネシアは水が硬水なので、泡が立 ちにくいという問題がありますが、その場合には少し多めに石けんを入れることで泡が立つ実験を実際にやってもらい、その違いに驚きました。インドネシアの 女性たちから「どうやったら油汚れもそんなにきれいになるのか?」といった質問もあがりましたが、それより多かったのは生協のカタログを見て、売られてい る石けんの種類の豊富さに驚き、現在は固形石けんしかないので、今後はシャンプーなども作ってほしい!というリクエストがあがりました。やはり、女性たち が使い始める最初の動機は美容!?という点なのかもしれません。
今後ATINAでは、石けんの品質をよりレベルアップさせ、販売免許も取得し、石けんの利用をもっと広めていきたいと話しています。日 本には、長年にわたる石けん運動やその使い方の経験の蓄積もある中で、今後、双方の交流を続けて、日本でもインドネシアでも環境を守っていく活動をつなげ ていきたいと思います。